世界一知る男が侍捕手コンビへ送る言葉 城島健司氏「甲斐はいいキャッチャーになりました」

今春のキャンプで談笑する甲斐(奥)と城島氏

金メダルへ「王手」をかけている東京五輪・野球日本代表の侍ジャパンに「レジェンド・サムライ」から〝ラストエール〟が届いた。2004年アテネ五輪では銅メダル、2009年のWBCでは世界一の経験を持つソフトバンク・城島健司球団会長付特別アドバイザー(45)が、本紙の直撃に激白。侍ナインだけでなく、愛弟子の甲斐(ソフトバンク)、梅野(阪神)の捕手コンビに向けて語った「心得」とは――。

――いよいよ侍ジャパンが金メダルをかけた一戦に臨む。ソフトバンクの正捕手・甲斐も大活躍している。ここまでの戦いをどう見ているか。

城島アドバイザー 暑い中、メダルの期待がかかる中で、本当によくやっていると思います。僕は球団のOB、捕手の先輩とかは抜きにして、純粋に日本国民として応援して見ていますけど。両キャッチャー、甲斐と梅野君の2人とも素晴らしい活躍だと思います。

――甲斐は大舞台でも腹を据えてプレーしているように見える。

城島 腹を据えないと戦えないですよ。今はメダルも確定ということで、みなさんから評価してもらっている。これはキャッチャーの先輩としてうれしいことです。でも、もし、予選で敗退してメダルが取れなかったとしても、彼らはこの経験が将来自分のものになると信じて準備して戦うわけです。それくらい日の丸を背負って戦うことは違うんです。

――それほどの重圧、苦しさがある。

城島 みんなの金メダルという期待のもと、期待通りの成績を出すということは本当に大変なことなんです。やっている選手たちが「大変でした」と言うことはないと思うけど、それを経験した選手たちの努力を日本全国の皆さんに知ってもらいたい。これはメダルが取れてなくても、九スポ(東スポ)が取材してくれてなくても、僕が声を大にして言いたいことです。彼ら(代表合流前のソフトバンク4選手)には、野球選手としてのキャリアを終える時に、この東京五輪が苦い経験ではなく、プラスのこととして残ってくれるということを伝えました。

――チームを離れる前、捕手同士で連携する重要性など、甲斐に多くの経験したことを伝えたと聞く。当時、感じたことを伝えたのか。

城島 そうですね。僕らがアテネで日にちを重ねるごとに前日には気づかなかったことがあり、試合を戦うごとに次はこうしようとルールも新しく決まってきた。そういうことについて、最初に俺らはこうしていたけど、こういうことが必要になってきたよ、と。打者だけでなく投手も一発勝負なんです。違うリーグの初めて組む投手をブルペンで受けることは難しくないが、試合のシチュエーションであったり、たとえば立ち上がりの良し悪しなどすべてのことに関してで、甲斐が千賀について梅野君に教えたり、逆にセ・リーグの投手は梅野君が教えてくれたり。

――なるほど。

城島 捕手からすると、そこまで3打席4打席立っている打者と、9回の抑えの投手が対戦する。今までの打席の傾向で、こういうところがあるから、入り球はこう行こうとか。入り球が決まればブルペンで予習ができますからね。普段対戦していてスライダーが良くても、今日のマウンド、気候だったらフォークにしようとか。こういう話を常に(捕手は)しているんですよね。そういう意味では…。甲斐はいいキャッチャーになりましたね。より、いいキャッチャーになって帰ってくるんじゃないですかね。

――2009年にWBCで韓国とのしびれる決勝戦を戦った。最後の一戦に臨むにあたってはどのような心構えが必要か

城島 まったく一緒です。最後まで1回も負けずに金メダル。これはプレッシャーをかけるわけではないですが、期待していいと思います。これほどのチームですし。無観客ではありますけども、自国でやってるホームの利は感じていると思う。オカルトかもしれないが皆さんの熱というかね。僕も声援を送りたいなと思います。折角ここまで来たんですもん。金メダル取ってもらいたいし、見せてもらいたいし、甲斐の金メダルにかじりついてやろうかなと(笑い)。かじりつかないですけどね。僕らの銅メダルがかすむから、彼が金メダルを取ったら無視してやろうと思います(笑い)。

――改めて。決勝戦へこれまでやってきたすべてを出せばいい。

城島 そうです。今まで通りやったらいいと思う。甲斐、梅野君、どちらが出ていても、出てない捕手との意志のコミュニケーションが欠かせないものだと思う。僕は彼ら2人のたまもので負けなしでここまで来ていると思う。終盤厳しい戦いを取っているのも、中継ぎの投手が抑えて流れを持ってきているのも含めて、出ている捕手だけではない功績が大きいと思います。僕も一緒にプレーしましたけど、稲葉監督としても、心強いんじゃないでしょうか。(甲斐は)ホークスとしても彼が起爆剤になるわけですから。オリンピックとレギュラーシーズンは別ですけど、一皮も二皮も向けた甲斐の成長をみなさんも期待してもらいたいと思います。

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