東京五輪 カヌー・水本 所属のチョープロ 社員ら画面越し応援「エネルギーもらえた」

画面越しに水本へエールを送るチョープロの社員=西彼長与町、チョープロ

 東京五輪カヌー・スプリント男子カヤックフォア500メートルに水本圭治(33)が出場した6日、職場のチョープロ(長崎県西彼長与町)で社員が画面越しに応援した。準々決勝敗退が決まると、一瞬の静寂の後、大きな拍手に包まれた。荒木健治社長(64)は「残念だけれど、五輪を当事者として感じられた。チャンスを与えていただけたことに感謝したい」、社員からも「夢をありがとう」「エネルギーをもらえた」とねぎらいの声が上がった。
 水本は岩手県出身。不来方高3年時にインターハイで4冠に輝き、大正大時代に2008年北京、12年ロンドン五輪出場を目指したが、あと一歩のところで代表入りを逃した。その後、長崎県スポーツ専門員として採用され、拠点を長崎に移して活動。各種大会で結果を出し続けたが、16年リオデジャネイロ五輪も届かなかった。
 「このままで終わりたくない。長崎で競技を続けたい」。県スポーツ専門員の任期切れも迫り、今後の身の振り方について悩んでいたころ、県スポーツ協会の理事長でもある荒木社長がサポートを申し出てくれた。17年4月、チョープロに採用された。
 それからは一緒に五輪の夢を追った。水本が競技に専念できるように、会社は合宿や遠征などの資金も援助した。水本は「出張の多い社員」という感覚で過ごすことができた。
 そんな状態ではあるが、社内の評判もすこぶるいい。出社したときは、自然と周りに人が集まる。農家を営む岩手県の実家から届く冬のりんごは、社員の楽しみになっている。
 関係各所へのあいさつ回りも欠かさない。どんなに同じ質問をされても、柔和な笑顔で対応する。スポーツ事業担当の新ケ江周二郎さん(36)が「穏やかでサービス精神旺盛な人柄。行く先々で愛される。地域に根差している」と評する“気は優しくて力持ち”を地で行くアスリートだ。
 今回の五輪は結果は出せなかった。でも、水本の感謝の思いはまた、強くなった。「雇ってもらえていなかったら、五輪を目指せてはいなかった」。4度目の挑戦で立った大舞台。本人にとっても、会社にとっても、一つの夢がかなった大会になった。

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