【新宿ゴールデン街交友録 裏50年史】ブラジルへ渡ったおみっちゃん 彼の地で我々を待っていたのは…

チャリティショーに行ったブラジルで(左から山谷、筆者、椎名、新谷)

先週に引き続き、おみっちゃん(佐々木美智子)とゴールデン街の人々。

そのおみっちゃんは「コンドルは飛んで行く」の歌に魅せられ、ブラジルへ飛んで行った。1979年1月の事。その後は頻繁に便りが届く。ブラジル在住の日本企業の方達が現地でおみっちゃんと出会い「新宿に行ったらゴールデン街のクラクラに寄ってみたら?」と何人も訪ねて来てくれた。南半球がそう遠くは感じなかった。その後、アマゾンの奥地・マナウスでお店をやっているらしいと、風の便りが…。

おみっちゃんのもう一つの目的はサンパウロで図書館を開く事だった。日系3世の子供などは日本語を話せない子もいる、その為には日本語の漫画が一番と。他にも作家・沢木耕太郎の家に行き、大量の本を分けてもらい、送ったな。チャッカリ私も好きな本を手元に頂いて…(笑)。大切にしているよ、沢木さん。

89年に一度帰国した時に「皆んなでブラジルに行かないか?」との話になり、まとまったメンバーが田中小実昌(直木賞作家)、故・山谷初男(個性派俳優)、新谷のり子(歌手「フランシーヌの場合」)、椎名たか子(六本木クレードルのママ)と私。

目的はマナウスの小学校増設の「資金集めのチャリティショー」とは口実で、夏のブラジルで遊ぼうぜ!と、その気満々の珍道中だった。

サンパウロ、リオデジャネイロ、サルバドル…からアマゾン奥地のマナウス、河口のベレン。呑んで食べて騒いでバスに乗り、アマゾン川で泳ぎ、船旅を楽しみ、踊り…。

そしてサンパウロ文化協会講堂でのチャリティショー。私が司会。はっぽん(山谷)が唄い、コミさん(田中)が謳う。新谷のり子がトリを務めて…さすが本物の歌手だわさ! 拍手喝采! 少しは資金集めに協力できたかな…。

そのおみっちゃん。ゴールデン街の「ひしょう」のママをやっていたが、この7月7日に突然辞めてしまった。これもコロナ禍の影響だ。でも8月末にはロフトブックスから写真集「ブラジルカーニバル」が出版される。まだ現役のカメラマン、佐々木美智子! 87歳。(敬称略)

◆外波山文明(とばやま・ぶんめい)1947年1月11日生まれ。役者として演劇、テレビ、映画、CMなどで活躍。劇団椿組主宰。新宿ゴールデン街商店街振興組合組合長。バー「クラクラ」オーナー。

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