独特なフォームと制球力を武器に今季は開幕投手を務めた
昨季に自己最多の9勝を挙げ、今季は初の開幕投手を務めたロッテの二木康太投手。直球こそ140キロ前半だが、190センチの長身から投げるボールには角度があり、制球力とのコンビネーションで打者を打ち取る。打者を翻弄しているのは、独特な“間”だ。【上野明洸】
投球時に軸足に体重を乗せた後、打者方向に出した左足がなかなか地面に着かない。テークバックからリリースの間に独特な間を作り、打者のタイミングをずらす。「自分でいうのもあれですけど、(タイミングは)取りにくいのかなと思います」と分析する。
「きっかけというのは特になくて、小さいころから特に何も考えずにピッチャーやっていたので……。高校時代から、ちょっと球持ちが長い、左足がなかなか着かないと(周囲に)言われていたので、こんな感じのフォームだったと思います。フォームの事を考え出したのはプロになってからですね」
プロに入り後、映像を見たりコーチから指導を受けたりする中で、フォームの特徴を自認。ルーキー時代には、当時2軍投手コーチだった小谷正勝氏、齊藤明雄氏には特に矯正されることはなく、個性を伸ばすよう指導を受けた。
「『それは特別、直すところではない。武器になる』とコーチの方々に言ってもらえて。その中でしっかり良いボールを投げられるようにという練習をしました」。個性は心強い武器となり、3年目の2016年には開幕ローテに入って7勝。2017年には規定投球回にも到達。コンスタントに結果を残してきた
昨季は規定投球回には届かなかったものの、与四球率1.17は、50イニング以上投げた先発投手の中でトップ。「フォームがしっくりきていて、コントロールが良かったというか、投球フォームが安定していたところが1番かなと思います」と振り返る。高校時代から高く評価されてきた制球力。その裏には、憧れた投手の存在があった。
学生時代に憧れたのは中日で活躍した精密機械
捕手が構えたところにボールが吸い込まれる感覚――。中高生の頃、テレビで見た中日・吉見一起投手の投球に目を奪われた。
「中日戦を見る機会は日本シリーズくらいしかなかったんですけど、見るたびにいいピッチングをされていて、『こうなりたいな』というピッチャー。小さいころからカッコイイなと思っていました」
憧れたのは剛速球で打者を圧倒する投手ではなく、打者との駆け引きと球の出し入れで試合を支配する投手。中日の黄金期を支えたエース右腕に、自分の姿を重ね合わせた。
「他にも藤川(球児)さんとかもカッコイイなと思っていましたけど、やっぱり自分の目指すべき場所は、剛速球の投手というよりも、コントロールの良い投手」
独特なフォームと、磨いてきた制球力。2つの武器で今季はプロ8年目にして初の開幕投手を掴み取ったが、前半戦を終え4勝4敗、防御率3.97。昨季のような安定感は発揮できずにいる。
「悔しさはもちろんありますけど、まだ1年終わったわけではないので。シーズンも残っていますし、優勝する可能性も全然大きいと思うので、今はとにかくそこに向けて、後半は戦力にならないといけないなと思います」
37勝34敗の3位で前半戦を終えたロッテ。石川歩、美馬学らも離脱し、先発防御率が12球団で11位の4.41と先発陣が苦しんだ。2010年以来の日本一へ、幕張の“精密機械”が、巻き返しを期す。
【動画】「タイミング取りにくい」と自負する二木のフォーム
【動画】「タイミング取りにくい」と自負する二木のフォーム signature
(上野明洸 / Akihiro Ueno)