MotoGP第10戦スティリアGP:後半戦最初のウイナーはルーキーのマルティン。赤旗中断のレースを制して初優勝飾る

 MotoGP第10戦スティリアGPの決勝レースがオーストリアのレッドブルリンクで行われ、MotoGPクラスはルーキーのホルヘ・マルティン(プラマック・レーシング)が初優勝を飾った。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は5位フィニッシュだったが、最終ラップで4番手にまでポジションを上げる走りを見せている。

 決勝日は雨が懸念されており、午前中のウオームアップセッションはウエットコンディションで行われたものの、MotoGPクラスの決勝レースが始まる現地時間14時には路面が回復。ドライレースが宣言され、ライダーたちもスリックタイヤを履いてグリッドに並んだ。

 好スタートを切ったのは、2番グリッドスタートのフランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)だった。バニャイアはホルヘ・マルティン(プラマック・レーシング)の前に出て1コーナーに飛び込み、ホールショットを奪う。3番グリッドスタートのジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)もバニャイアと並ぶように1コーナーに入り、その後2番手を堅守。トップバニャイア、2番手マルティン、3番手がジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)で、4番手にはマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が浮上する。

 2周目、4コーナーでミルがラインを外すミス。4番手に後退し、変わって3番手にクアルタラロが浮上した。5番手にはマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)、6番手にはマルク・マルケスがつける。

 しかし3周目、赤旗提示。レースは中断となった。ロレンツォ・サバドーリ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)とダニ・ペドロサ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が3コーナーでクラッシュし、バイクが炎上したためだった。サバドーリは担架で運び出されたが、マーシャルと言葉を交わす様子が確認された。サバドーリはその後、メディカルセンターに向かったという。ペドロサはピットに戻った。

 リプレイで確認できた限りでは、ペドロサがまず3コーナー立ち上がりで転倒し、そのバイクにサバドーリが突っ込んで2台のバイクがコース上で炎上したようだ。さらにガソリンと思われる液体がコース上に大量に流れ、この処理のためにしばらくレース中断となった。

 約30分の中断を経て、周回数は1周減算の27周でレースは再開された。グリッド順は当初の予選結果に準じている。サバドーリはグリッドに並ばず、ペドロサはレース2も出走した。さらに、ウオームアップラップでは、ビニャーレスにトラブルが発生。エンジンがストールしたためにピットに戻ることになったのだ。このため、ビニャーレスはピットレーンスタートになった。

 2度目のスタートではマルティンが好スタートを切るも、ミラーが3コーナーでトップを奪取。2番手に後退したマルティンの背後にはミルが迫る。そのトップ3から少し離れてクアルタラロが4番手、5番手にヨハン・ザルコ(プラマック・レーシング))、6番手には11番グリッドスタートのアレックス・マルケス(LCRホンダ・カストロール)がつける。大きく後退したのはバニャイアで、2番グリッドスタートながら7番手にポジションダウンした。

 また、オープニングラップの1コーナーではクアルタラロとマルク・マルケス、アレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)が3台横並びとなり、結果、マルク・マルケスとアレイシ・エスパルガロがアウト側にはらんでポジションを落としている。マルク・マルケスは2周目にも1コーナーでオーバーランを喫し、さらに後退した。

 3周目、トップのミラーがマルティン、ミルに相次いで交わされる。トップはマルティン、2番手にはミル、3番手はミラー、4番手にクアルタラロ、5番手にザルコが続く展開。中上は7周目には7番手につけている。

 7周目、3コーナーでクアルタラロがミラーをオーバーテイク。すぐさまミラーがパスし返すも、6コーナーでクアルタラロが再びミラーを交わす。クアルタラロが3番手に浮上した。

 そうする間にトップのマルティン、2番手のミルが後方を引き離しつつあり、その差は1秒以上になっていた。トップ争いはマルティン、ミルの一騎打ちの様相を呈する。3番手争いはクアルタラロがけん引していたが、ミラー、ザルコとともにワンパックになっており、依然として予断を許さない。

 さらにその後方では、アレックス・マルケスと中上による接戦の6番手争いが展開されていた。11周目には中上が6番手を確かなものとし、約2.5秒前を走る5番手のザルコを追う。

 残り10周、トップはマルティン、2番手はミルで変わらないが、マルティンとミルとの差は少しずつ開いていた。その一方で3番手のクアルタラロと4番手のミラーは僅差を保っていたが、ミラーは残り10周の7コーナーで転倒。ここまで表彰台をねらえる位置をキープしていただけに惜しいクラッシュとなった。

 残りが5周になるころには、マルティンとミルとの差は1秒以上に開いた。ミルと3番手のクアルタラロとの差は5秒以上。トップ3はそれぞれ、単独走行で終盤のラップを刻んでいく。

 その後方で5番手にポジションを上げていた中上が、4番手のザルコを猛追していた。一時2.5秒以上あった中上とザルコとの差は、残り3周で、約0.5秒、残り2周で0.2秒を切った。最終ラップ、中上はついにザルコをとらえて4番手に浮上。しかしその背後には、ブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)がつけていた。

 そして、マルティンはトップを守り切り、ルーキーにして最高峰クラス初優勝を飾った。2位はミル、3位はクアルタラロが入った。最後まで争われていた4位は、中上とともにザルコを追い上げていたビンダー。中上は0.152秒差で惜しくも5位だった。

 マルク・マルケスは8位、ワイルドカード参戦のペドロサは、11位でチェッカーを受けたが、10位だったバニャイアが結果に3秒加算のペナルティを受けたために、最終結果10位。2018年最終戦バレンシアGP以来のレースでトップ10に入る見事なレースを見せた。

 ロッシは17番グリッドからスタートして13位フィニッシュ。代役参戦のカル・クラッチロー(ペトロナス・ヤマハSRT)は17位だった。

2021年MotoGP第10戦スティリアGP決勝レース
2021年MotoGP第10戦スティリアGP 優勝:ホルヘ・マルティン、2位:ジョアン・ミル、3位:ファビオ・クアルタラロ

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