【東京五輪】組織委・武藤氏が招致時のPRに本音「全く適切でないプレゼンだった」

武藤敏郎氏

東京五輪・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長は大会閉幕から一夜明けた9日、都内で記者団の取材に応じ、激動の大会を総括した。

今大会は新型コロナウイルス禍で史上初の延期となり、様々な困難に直面。武藤氏は「2014年から7年半、大変長い年月。特に延期が決まってからの1年が非常に長く感じました」と振り返りつつ「我々は開催して良かったと思います」と感慨深げに話した。

開催を通し、未来の五輪像についても思うところがある。「これだけ規模が大きく、たくさんの人が集まるとなると、受け入れられる都市は非常に限界がある。経済力がある国の大都市にならざるを得ない。それを続けることは大きな課題だと思います」と持論を展開した上で、東京都が招致の際に示した「コンパクト五輪」について辛辣な意見をぶつけた。

東京都は招致時にIOCへ「選手村を中心に半径8キロ圏内に主要な競技会場を集中させる」とアピール。これについて武藤氏は「一見、最もらしいんですけど、全く適切ではないプレゼンテーションだったと私は思います」と言い切った。

「例えば10キロ先にちゃんとした施設があるのに、8キロ以内にたくさんの施設を作らないといけない。運営しやすくなるのは分かりますが、なぜそんなことを言わなければいけないのか、よくわかりません」

最終的には埼玉、神奈川、千葉、静岡など他県の施設も最大限に利用。武藤氏は「新しい施設を作らなくていいので費用は削減はされました。あまりお金をかけずに、しかしアスリートがパフォーマンできる条件を満たす会場を用意するために『8キロ圏内』に何の意味があったのかな、と。ちょっと理解できませんでした」と当時のプレゼンに苦言を呈した。

これを踏まえ、武藤氏は未来の五輪について「例えばパリ五輪はサーフィンをタヒチでやる。千葉、神奈川にしてみれば、自分の県に施設がこんなにあるのになぜ東京大会なのか?という思いもあるでしょうが、お金をかけず簡素に開催するには広域開催も考えるというのが私の思い。多くの国、都市が共催する可能性があってもいいんじゃないか」と理想郷を語った。

© 株式会社東京スポーツ新聞社