運用商品が選べる「変額保険」が得に思えるという相談に、保険のプロが仕組みを解説

投資を始めて2年目の金融女子から「この保険すごいみたいなんですがどうなんでしょうか?」とメールが届きました。早速、見てみると、「金融出身でメディアでも記事を書いている」という人のブログで、内容は「変額保険」でした。21年間の平均リターンが11%という商品です。なるほど一見「すごく儲かりそう」に書いてあります。

これを信用していいのか? それとも大きな落とし穴が待っているのでしょうか? 今回は、「変額保険」について解説をしていきましょう。


「変額保険」は人気になってきた理由は?

「変額保険」は、以前からあった保険ですが、最近のトレンド(流行)になっています。

トレンドと言っても、保険営業員が力を入れて販売しているってことです。そのため「変額保険」が注目されて、問い合わせが多くなっています。なぜ、「変額保険」がトレンドになったかという説明をしましょう。

新型コロナの前は、「外貨建て保険」がよく売れていました。その背景には、低金利時代があります。円で運用してもぜんぜん増えないので、金利の高い外貨に人気が集まったからです。しかし、為替リスクがあり、複雑な仕組みになっています。内容を理解できないままの契約で損をしてしまった、説明不足などの問題で国民生活センターへの相談やクレームも多く、ニュースにもなりました。

ところが、新型コロナウイルスの影響で外貨の金利が下がり、「外貨建て保険」は、あまり魅力のない商品になってしまいました。そこで替わって登場したのが「変額保険」です。

「変額保険」のしくみ

では、具体的に「変額保険」の仕組みを見ていきましょう。一言で言うと、死亡保障などの保険と投資信託で運用する商品のセット商品です。

払い込んだ保険料は、一般勘定と特別勘定に別れます。一般勘定というのは、運用に関わらず、一定の給付を受けられる分です。この部分はあらかじめ決められた予定利率で運用されます。つまり保険資産の部分ですね。

特別勘定は、運用部分に当たります。投資信託などで運用するので、運用成果によって受け取れる金額は変わってきます。簡単に言ってしまうと、払い込んだ保険料は、保険部分と運用部分に別れるということです。注意してほしいのは、払い込んだ保険料が全額運用に回らないという点です。

「変額保険」の運用部分は、運用方法を選択できるようになっています。全世界株式型、日本株型、債券型、バランス型などいくつかの運用方法から選ぶことになります。運用商品はリスクが高いもの低いものがあります。リスクの高い商品を選ぶと、それだけリターンも期待できますが、損失も大きい可能性があります。

本当はすごくない「変額保険」?

では、本題の『「変額保険」はすごいのか?』ということです。結論を言ってしまえば、特別にすごくはありません。

例を挙げながら、説明をします。

変額保険の中で、運用のパフォーマンスがもっとも良い世界株式型を選択した場合、この10年は15%以上のパフォーマンスを上げています(2021年7月)。株式市場は、新型コロナで一時期下がりましたが、かなり値上がりをしていることもあります。この変額保険で世界株式を設定している方は、増えていると思います。

ただし、先ほども説明しましたが、特別勘定の部分が増えているのです。ですので、支払った保険料が全部運用されているわけではありません。では、こんなにいいパフォーマンスを上げている商品と言うのは、他にないのだろうかということで調べてみました。

モーニングスターのファンドランキングの国際株式で10年間のリターンで検索してみました。

1位から20位ぐらいはまでは約16%以上のパフォーマンスです(2021年7月20日、20位までの検索)。この20位までの投資信託はいろんな商品が入っているので、簡単な比較はできません。

ここで言いたいのは、たしかに世界株式は良いパフォーマンスを上げています。しかし、他にも良いリターンの商品はあります。そして投資信託を利用すると、投資した金額の全額が運用に回るので、リターンはその分多くなります。

さらに、運用コストを見ると「変額保険」の方が割高になります。

というのは、信託報酬のほかにも、資産運用管理などがかかるのです。信託報酬というのは、投資信託でも毎年かかってくる費用ですが、それにプラスしてかかる上に、契約から一定期間内に解約をすると、解約控除という余計な費用がかかってしまいます。

長期投資に向いている商品とは

「変額保険」の特徴は、自分で運用を選べるところです。ですので、リスクの大きな株式を中心とした運用もできますし、安定的な債券を中心とした運用もできます。2021年6月は、株価が好調なので多くの運用がプラスになっていると思いますが、上がったり下がったりするのは当たり前のことです。それで一喜一憂する必要はありません。

ただ、運用商品によっても違ってくることを忘れないでください。

「変額保険」は、特別にすごい商品ではなく、あまり有利ではないとわかります。

もし、運用したいのであれば、信託報酬の安い投資信託で運用した方が、投資額を全額運用に回すことができますし、運用コスト(手数料)も安くなります。さらに、iDeCoやNISAなどを利用することで税制の優遇があるのでもっと有利に運用できると思います。

私の結論としては、何度も言っていますが、「保険」と「運用」は分けて考えるのが効率がいいということです。つまり、保険料の安い定期保険や収入保障保険で、死亡保障に備えて、運用は手数料の安い商品で長期投資です。やっぱりこれが基本だと思いますよ。

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