青木真也が五輪選手へダブルの金言「格闘技界への転向甘くない」「誹謗中傷は通過儀礼」

青木真也は「本当に持っていると思います」と柔道男子の井上康生監督を絶賛する

本紙での柔道解説が大好評だった格闘家の青木真也(38)が、東京五輪を総括した。早大柔道部時代に全日本ジュニア強化選手にも選ばれた「バカサバイバー」は、今回のメダルラッシュに沸いた日本柔道界をどう見ていたのか。格闘技界きっての〝炎上王〟としても知られるだけに、大会中に浮上した選手への誹謗中傷問題にも金言を放った。

【格闘家・青木真也の多事柔論】今回まず「さすがだな」と思ったのは、井上康生監督の辞めるタイミングですよ。「任期満了」ってことですけど、これ以上はないじゃないですか。天才だね。辞め時が素晴らしい。本当に持っていると思います。

本題ですが、今回の注目は何といっても金メダルラッシュでしょう。これには複数の要因があると思っていて、1つはルールが改正されたことです。足取りがなくなり、それによってメダルが取りやすくなった。

あとは、コロナ禍において代表が(男子66キロ級以外は)1年前には決まっていたことで、出場する選手がコンディショニングをしやすくなったことです。今までは無駄に強化合宿があったし、ギリギリまでライバル選手と試合をしなきゃいけないし。今回はそのストレスがない。あとは井上体制が〝普通のこと〟をきちんとできたことも実は大きかったと思います。

柔道界の今後? これが頂点なのでこのままうまく運用していければいんじゃないですかね。選手の格闘技界への転向ですか? それはやめておいたほうがいいでしょう。「ファンもそんな夢を見るなよ」って感じです。どの選手も「今の柔道」に特化しているので、MMA(総合格闘技)と全く別の話になっちゃってますから。足をつかんじゃいけないし「待て」もあるし。そもそも、サブミッションが強くないし。

あとはMMA側のレベルが上がっちゃったっていうのもあります。昔のように、五輪選手がフィジカルで圧倒できるものではなくなっています。テークダウンの時に柔道は使えないし、すぐ来てもレスリングだろうが、柔道だろうが甘くないよ、というのが現実です。

あとは五輪中、選手への誹謗中傷が問題になりました。俺に言わせれば誹謗中傷って〝通過儀礼〟なんですよ。ファンに交じって一定の割合で〝アレなやつ〟は必ずいて、それは人数じゃなくて割合なんです。例えばファンが100人しかいなければ1人くらいだから声が小さい。だけど、ファンが100万人になるとそういうやつが1万人になるんですよ。だから、誹謗中傷が増えるのはファンが増えてるってこと。マイナースポーツがメジャーになっていく〝通過儀礼〟ってことなんですよ。

というか、われわれ格闘技やプロレス界は文句を言われてなんぼですからね。注目されてるってことなんだから、俺にしてみればおいしいんですよ。俺のところにも昔はよく来ましたよ。一晩中スマホが鳴りやまない時期もあったもん。ツイッターの通知で。「死ね」だのなんだの。通知オフ? しないよ。面白いから。「こいつらばかだなー」って思って見てましたよ。最近は「こいつには効かない」ってばれたのか、来なくなりましたけど。

ところで俺も今度のDDT・後楽園ホール大会(15日)でMAOを相手にEXTREME級王座の防衛戦があるんだけど、そこでハードコア柔道をやるから見に来てください。ハードコア柔道が何なのか? 石井慧が得意っていうのがヒントだ!

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