どこに投資する?銘柄探しのカギは連想ゲーム

株式投資を始めるときにハードルとなるのが銘柄選択です。3,700社以上も上場している中で、全ての会社を知っているわけではないし、自分が知っている会社の株価が上がるとも限りません。前回の記事では『会社四季報』を使った銘柄選択を紹介しましたが、今回は自分の頭の中だけで完結する方法を紹介します。その方法とは「連想ゲーム」です。


マクロからミクロへ絞り込もう

ある会社の株式に投資をする場合、その会社の業績が今後どうなっていくかを予測するために、過去の業績やその会社が属する業界について研究し、分析をします。株式投資をする以上、この作業をしないことには良い投資成績を残すことは難しいでしょう。しかし、それは既に投資を検討する会社が決まっている場合であって、まだどの会社に投資するかが決まっていない場合はどうすればよいのでしょうか?

そんなときは、まずマクロの視点を持つことから始めましょう。マクロの視点というのは、とにかく大きく広い視点から入るということです。たとえば、世界全体を見渡して、どの国の会社に投資をすればいいのかを考えます。日本語しか分からないから日本の会社にする、となる人も多いかもしれませんが、可能であれば、どの国が今後は伸びていくのか、どの国にどのようなリスクがあるのか、などを考えて投資先を決められるようになると本当は理想でしょう。今回は日本の会社について書いていきますが、マクロからミクロに落とし込む考え方は国籍を問わず使えますのでしっかりと身につけてください。

タイムマシンに乗れたら?

先日、小学校1年生から3年生までを対象に金融教育の一環として株式投資について授業をしました。コロナ前と現在で生活にどのような変化があったかを聞いたところ、多くの子どもたちがコロナ禍における行動様式の変容について正しく理解していました。それぞれの回答をまとめると、大きく分けて以下の4つでした。

(1):レストランなどで外食出来なくなった代わりに、テイクアウトやデリバリーを利用する頻度が増えた
(2):遊園地や公園に行けなくなったので、家でゲームをする時間が増えた
(3):飛行機や新幹線に乗って旅行などに出かけることがなくなった
(4):親が在宅勤務をする時間が増えた

では、タイムマシンに乗ってコロナ前に戻れるとして、どの会社の株式に投資をするかを聞いたところ、やはりゲーム会社やデリバリー関連の会社には投資をしたい一方で、航空会社や外食関連の会社には投資をしたくないという答えが返ってきました。

実際、コロナ前(2019年の年末)と1年後(2020年の年)で株価を比較してみると、出前館は178.6%、任天堂は49.7%上昇している一方で、サイゼリヤは-28.4%、日本航空は-41.3%下落しており、子どもたちの投資判断は見事なパフォーマンスの成功になると分かります。

まずはザックリと将来予想

そんなの、結果論だから誰にでもできると思うかも知れません。たしかに、将来のことを正確に予測するのは無理ですが、かといって前述のシナリオは天才にしか思い浮かばないものではありません。普通に考えればそうなるよね、という程度のものでしょう。

ザックリとでいいので、今後はどのような社会になっていくのか。どのような変化が生じ、何が主流となっていくのかを考えることから、徐々に個別銘柄へと落とし込むのが重要です。

その際に、単に社会の変化を予想するだけではなく、変化が自然に起こるものなのか、それとも国が変化させたがっているのか、という点も重要になってきます。

たとえば、前述の金融教育の授業でも、将来はどうなっていくかを議論しました。そのなかの回答の1つが「電気自動車が普及する」というものでした。これはまさに国がそのように変化させたがっていることにあたります。世界的な脱炭素の流れもあり、本気で国が電気自動車を普及させようとすれば、補助金や減税などで後押しをするでしょう。「政策に売りなし」という格言があるように、将来の変化を予測する際に、変化を後押しする要因があるかどうかも考えるのが重要です。

どこまで思考を拡大できるかが勝負

さて、練習をしてみましょう。それでは、今後は電気自動車が普及すると仮定して、その場合はどの会社の株に投資をすればよいのでしょうか?すぐに思い浮かぶのはトヨタやホンダなどの自動車を作っている会社でしょう。しかし、それはまったく思考が広がっていません。もっと関連する産業などを考えていくのです。

ちなみに子どもたちからは意外にも自動車を作っている会社の回答は出てこず、大元の電気を作っている会社、つまり電力会社への投資がいい、または電気自動車を作るときに重要な部品を作っている会社に投資したいという回答が出ました。まだ小さいのにしっかりと連想できていて素晴らしいと思いました。

電力供給で言えば、電力会社はもちろんですが、最近では家電小売り企業も太陽光発電による売電などもしているので、その観点では投資対象になるでしょう。また、重要な部品という観点では、リチウムイオン電池や全個体電池などを作る電池企業や、電力を動力に効率的に変換するパワー半導体を増産できる会社なども含まれるでしょう。

このように、まずは世の中全体の変化を予想し、その変化が自然発生するものなのか、更には国が推し進めたい変化なのかを考えていきます。変化が起こる確率が高いと考えたら、つぎはその変化によって追い風を受ける産業を、最後に当該産業に属する会社のなかから、有望と思われる投資先を選んでいく順番で、銘柄選定をしていけばいいのです。

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