救済に否定的な見解 被爆者要望受け厚労相

菅首相(左端)と面会し、要望書を手渡す被爆者団体の代表ら=9日午後0時50分、長崎市宝町、ザ・ホテル長崎BWプレミアコレクション

 長崎の被爆者5団体は9日、長崎市内で菅義偉首相らと面会し、国が定めた被爆地域の外で原爆に遭い、被爆者と認められていない「被爆体験者」の救済などを求めた。同席した田村憲久厚生労働相は、被爆地域外での放射線被ばくによる健康被害は「科学的知見は得られていない」とし、従来通り否定的な見解に終始した。菅首相は回答しなかった。被爆者からは落胆や反発の声が上がった。
 代表して要望書の趣旨を説明した県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(81)は取材に「ゼロ回答に近い。見捨てられている。首相は被爆者を金食い虫だと思っている」と批判。広島の「黒い雨」訴訟の被爆地域の拡大は、長崎の被爆体験者と同趣旨とし、長崎の被爆体験者にも「政治的決断を」と迫った。
 県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(78)は「まだ完全に決断出来るところまで具体的に詰めていないのではないか。長崎も今後認められる可能性はあると思う」と希望をつないだ。
 核兵器禁止条約への参加も要望したが、鷲尾英一郎外務副大臣は改めて署名しない考えを示した。長崎原爆遺族会の本田魂会長(77)は「核兵器の破壊力を知っている日本こそが、先頭に立って恐ろしさを伝えるべき」と憤った。
 このほか、長崎原爆資料館への訪問を求めると、菅首相は「検討したい」と述べた。評価する声が上がる一方で、長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(80)は「言わなくても行くのが当然。長崎の被爆者と会うのに、実情を知らずに会うのは失礼だ」と切り捨てた。

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