【山崎慎太郎コラム】サードを回る時に駒田さんが哲ちゃんに「バーカ」

第7戦の2回、加藤(手前)は駒田に右越え先制ソロを被弾し…

【無心の内角攻戦(10)】巨人との日本シリーズは3勝3敗で藤井寺で第7戦を迎えました。3連勝して加藤哲郎さんの「ロッテの方が強い」発言があって流れが変わり、近鉄のイケイケムードはなくなって受け身になってしまいました。逆に向こうは生き生きしている。そんな中でその哲ちゃんが先発しました。前日に投げた僕もベンチに入っていたと思います。2回に駒田徳広さんが右翼に特大の先制ソロを放ちます。サードを回る時に駒田さんが哲ちゃんに「バーカ」と言ったんですね。ホンマに言うてるんですけど、哲ちゃんには聞こえていない。聞こえてたらとんでもないことになってたでしょう(笑い)。

あの「巨人はロッテより弱い」報道が巨人に火をつけたというのはあったでしょうし、それが勝ちに結びつくかどうかわからないのに結びつけた巨人はやっぱ強かったんでしょう。斎藤雅樹さん、桑田真澄さん、宮本和知さんと投手で勝ってきて、原辰徳さんもこの日も2ランを打って完全に目を覚ました。打つべき人が打って歯車が回る。

こっちは5戦目で阿波野秀幸さんが負けた時から歯車が狂い始め、もうはね返す力はなかったですね。イケイケの時は強くても、いったん受け身に回ると若いからもろい。7戦目になるとやる前から勝ちそうな雰囲気なかったもんね。負ける気で行ってるわけではないけど、始まったら勢いが違う。向こうが「あれ?」ってなったかもしれない。

哲ちゃんは正直だったと思いますよ。あの時はみんなが「これが巨人?」って感じていたし、まさか3連勝して4タテ食らうなんて思わない。それがきっかけになったのか、香田勲男さんに完封されて、だんだん歯車が狂っていった。でも哲ちゃんが言ってなかったとしてもどうなっていたかはわからない。勝負のあやなんでね。口は災いのもとといいますし、眠った巨人を起こしてしまった。明らかに負けん気の強い人ばかり。若いやつが調子こきやがってみたいに思ったのでしょう(笑い)。

もちろん前年「10・19」の方が全然悔しい。日本シリーズってシーズン優勝のご褒美というか、お祭りみたいに僕は思っていた。それで勝って「日本一だ」とも思わないですし、シーズンに勝るものはないですよ。一気にひゅーんと終わりましたけどね(笑い)。シーズンがしんどすぎて日本シリーズどころじゃなかったし「これで勝って巨人だ!」なんてない。去年のことあるから西武を叩くことしか考えていなかったですもん。でも…。ウチらしいっちゃらしいでしょ(笑い)。4連勝できずに4連敗するんやもん。でも…あの時の近鉄でないと2年続けてあんなドラマは起きない。

あの2年間は何事にも代えられない僕らの財産であって、あれ以上の緊張感はないですよ。

念願のリーグ優勝を果たした近鉄ですけど、オフにまたコケるようなことが起きたんです。せっかく勝ったのに…。

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