「描いてみんね!長崎」事業 成果上々 小説や漫画で県の魅力発信へ

「描いてみんね!長崎」事業により本県が取り上げられた小説や漫画本

 小説家や漫画家を取材旅行に招く長崎県の事業「描いてみんね!長崎」が順調に成果を上げている。事業は6年目を迎え、これまでに延べ20人の作家を迎え入れ、17作品で県内の名所などが取り上げられた。県文化振興課によると、全国的にも珍しい取り組みで「長崎の強みである歴史をはじめ本県の魅力を発信し、幅広い世代の人に興味を持ってもらうきっかけになっている」と手応えを感じている。
 6月には、直木賞作家の川越宗一さんによる平戸を舞台にした「海神の子」(文藝春秋)、7月には、ミュージシャンの渡會将士さんによる長崎が舞台の「西の果てのミミック」(同)の単行本2作品が刊行された。
 川越さんは2018年の8月末から長崎、五島、平戸を訪れ、平戸で生まれた明(中国)の英雄、鄭成功(ていせいこう)の母、田川マツの生涯を描く作品を執筆した。渡會さんは同年9月に長崎と五島を訪問。和華蘭文化が入り乱れる長崎で、主人公が奇妙な女性と出会い不思議な出来事に遭遇していくエンターテインメント小説を書き上げた。
 同事業は漫画家や小説家を2泊3日で受け入れ、県内各地の希望する場所を学芸員らと一緒に巡る。交通費や滞在費など取材にかかる費用を支援。作家には帰った後も本県の情報を定期的に伝え続け、継続的な関係性を構築している。本年度の事業費は約191万円。
 県文化振興課によると、16年度は6人、17年度は3人、18年度は6人、19年度は4人が活用。新型コロナウイルスの影響で20年度は1人。
 これまでに川越さんのほか、安部龍太郎さん、澤田瞳子さん、島本理生さんといった直木賞作家も来県した。テレビドラマ化された「校閲ガール」の著者、宮木あや子さんは大村市の向陽高校をモデルにした小説「手のひらの楽園」(新潮社)を発表。魚乃目三太さん作の漫画「戦争めし」(秋田書店)では、長崎原爆の話も取り上げられた。
 同事業は、作品を読んだファンが舞台となった場所を巡る「聖地巡礼」などによる交流人口の拡大も目的の一つ。同課は新型コロナ収束後を見据え「より効果的な発信を考えていきたい」としている。

鄭成功記念館で取材をする川越さん(左)=2018年9月、平戸市川内町

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