終戦76年 遺された戦時の物語〈中〉〝紙〟が伝える戦争 資料検証し理解を 「平和展」で佐々木雄二さん

 上越市本城町の小川未明文学館(高田図書館内)で開かれている「平和展」(上越市主催、15日まで)は、「手紙から見る戦争」と題したコーナーを設けている。

 市民から提供された家族を案じる兵士の手紙、遺言状、銃後の生活を戦地の兵士に伝える絵はがきなどからは、正しい戦況を知らされず、翻弄(ほんろう)された市民の様子が浮かび上がる。

 前島記念池部郵趣会会長で、同市大和3の自宅にギャラリー「赤いポスト」(新型コロナウイルス感染症対策のため閉館中)を併設する佐々木雄二さん(75)は、資料提供者の一人。長年にわたり収集した膨大な数の切手や郵便、発行物の中から、同展では明治、大正、昭和初期の戦争にまつわる絵はがきや年賀状、軍事郵便、新聞や雑誌の付録として発行された双六(すごろく)などをパネルにまとめ掲示している。

 そこから読み取れることは、不利な戦況や多くの犠牲についてはひた隠しにし、戦争を美化して突き進んでいった時代の空気だという。

 子ども向けの付録として配られた双六は、名だたる画家が絵を手掛け、戦争が生み出す繁栄の面だけを描き出す。その陰に悲惨な犠牲があることなどみじんもうかがわせず、「戦争はこんなに輝かしく栄誉あることなのか」と遊びを通して子どもたちに教え込ませた。

佐々木さんが収集した、戦争にまつわるさまざまな資料が展示された「平和展」会場

 紙の資料が意味するもの、背景に隠された事実に思いを致すことが、史実を理解することだと佐々木さんは話す。戦争を知る世代が減少し、当時の記憶が失われつつある中、「『生身の物』として残る当時の資料を検証し、言葉だけでは伝わらない戦争の悲惨さや平和の尊さを、一人一人が理解してほしい」と願っている。

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