GR010ハイブリッドの燃圧低下トラブルは“給油リグの中”に原因「すべての問題は修正できた」とトヨタ/ル・マン24時間

 WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦するトヨタ GAZOO Racingのテクニカル・ディレクター、パスカル・バセロンは第4戦ル・マン24時間を前に、今季前半のラウンドで同チームの新型ル・マン・ハイパーカー(LMH)、GR010ハイブリッドを襲った信頼性の問題が繰り返されることはない、と確信している。

 2021年に同チームが投入したGR010ハイブリッドは8月21〜22日に初めてのル・マン24時間レースを戦うが、その信頼性については疑問が投げかけられている。

 第3戦モンツァ6時間レースにおいて2台双方に発生した直近の問題(燃圧の低下)については、汚れた燃料の影響を受けたことをバセロンは明らかにしたが、それはすでに解決されているという。

「これまでに抱えていたすべての問題に対して、説得力のある対策を講じている」とバセロンは述べている。

「我々はいかなる根本的な問題にも悩まされていない。我々は可能な限りの自信を持っているが、何か新たなことが起こる可能性はある」

「我々は、抱えていたすべての問題を修正できたと思う。8号車のモンツァでの主な問題は、燃料の汚染だった。これは2台いずれもに起き、7号車にはプラクティス中に発生していた」

「その汚れはどういうわけか透明で、フィルターにも現れることがなかったので、それがどこから来たのか、(その時は)明確に理解することはできなかった」

 チームはのちに、燃料汚染の原因を給油リグの中に発見し、8月15日に予定されるル・マンのテストデーを前にそれらは清掃され、リビルトされているとバセロンは語った。

 バセロンによれば、モンツァで最終的に優勝を遂げた7号車が、小林可夢偉のドライブ時に一時的にコース上にマシンを停止することを余儀なくされた電気的な不具合についても、解決されているという。

 15日のテストデーは、サルト・サーキットにおけるGR010ハイブリッドの初めての走行となる。

「明らかに、テストデーはセットアップとシステムの開発になる。すべてが新しい」とバセロンは語る。

「忙しい一日となるだろう。テストアイテムのリストを構築することが唯一の戦略だ。もっとも重要なテスト項目は2台のクルマで行なわれるが、ほかのいくつかは(1台で行なったのちに)共有される」

テストデーを前に、ル・マン、サルト・サーキットに搬入されたトヨタGR010ハイブリッド

 バセロンはまた、テストデーに向けたBoP(性能調整)において、当初ル・マンで予定されていたLMHの出力の低下について、FIAとACOフランス西部自動車クラブがそれを行なわないという決定を下したと説明した。

 当初、トヨタとグリッケンハウス・レーシングのグリッケンハウス007 LMHは、ル・マンでは500kWに出力が制限されるとしていたが、いずれのマシンも第3戦モンツァでのBoPが維持されている。すなわち、GR010ハイブリッドは515kW、グリッケンハウス007 LMHは520kWである。

「それは、驚くことではない」とバセロンは語る。

「開幕戦のスパではLMP2が(LMHに)非常に接近しているのを見たとき、我々はすぐにル・マンに向けいくつかの疑問を抱いた。それをFIAとACOに共有したのだ」

「ある時点で彼らは、我々の懸念を共有し、簡単な改善に至った」

「たしかに、もともとの計画ではル・マンでは500kWで走ることになっていた。ただ、関係者全員が520kWで問題なく走らせることができたと思うので、今年、そしておそらく来年については、この件(LMP2との差)を解決するのは簡単なことだ」

「ただし、これは論理的には2023年には見直す必要がある。LMDh車両が参戦してくるとなると、彼らは通常、520kWでは走行できないはずだからだ」

 バセロンはまた、彼らが4回にわたり実行してきた耐久シミュレーションテストは、すべて520kWのパワーレベルで行なわれたと語っている。

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