RIZIN・榊原CEOが見た東京五輪の功罪「費用を〝見える化〟してほしい」「裏側のドタバタ見せたらダメ」

プロの〝興業師〟榊原CEOは東京五輪をどう見たか

【東京五輪 祭典の舞台裏(4)】東京五輪で日本は過去最多となる27個の金メダルを獲得する一方、国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会など運営サイドの様々な問題点も浮き彫りとなった。新型コロナウイルス禍という異例の環境の中で行われた大会は、プロのイベンターの目にどのように映ったのか。格闘技イベント「RIZIN」のトップである榊原信行CEO(57)が本紙インタビューに応じ、東京五輪の〝功罪〟を指摘した。

――プロの〝興業師〟の立場から、東京五輪をどう見たか

榊原CEO(以下、榊原)まず開会式と閉会式にどれだけお金を使ったのか、収支を出してほしいですよね。血税を使ってやるんだから「これにこれだけかかった。その上でスポンサー費はどれだけあって、チケットを売れなかったからこれだけマイナスで、これだけ税金で補わなきゃいけない」という収支が分かればもっと検証できますから。

――開会式で百数十億円の金が動いたとの話もある

榊原 僕も報道で見たけど「ウソでしょ」って話じゃないですか。1億くらいにしか見えない。あんな無駄なものやめて、コロナの病床を増やした方がよかったですよ。チケット収入や放映権で収支を取って自活していかなきゃいけない、僕らのような事業で言ったらあり得ないです。

――費用に見合ったものではないと

榊原 アスリートの姿は純粋だし、何物にも代えられないくらい美しかった。でも「金メダルをたくさん取ったからいいや」じゃないんですよ。費用を〝見える化〟してほしい。国民もたいがいバカじゃない。見るところはしっかり見ていますよ。

――大会の運営自体にもほころびが生じていた

榊原 バブル方式が破られたところとか、予想通りですよね。僕ら(RIZIN)の6月の東京ドーム大会に出てもらったアゼルバイジャンのトフィック・ムサエフはホテルの部屋から出ずストイックにルールを守っていたんですよ。それなのに15分の外出特例なんて「そんなルールあるの!?」って話じゃないですか。

――ムサエフは真摯にルールを守っていた

榊原 そんなにアバウトでいくなら観客も入れて良かったと思います。なんで無観客だったのか、いまだに分からない。プロ野球もサッカーも我々も観客5000人は認められているんだから(村井嘉浩)宮城県知事が言っているのが正しかったと思います。

――なんであんなことになったのか

榊原 決めるのが遅すぎたんでしょう。2万枚売れているチケットをいったん払い戻して、5000人に絞り込んでもう1回売ると、オペレーションが間に合わなかったんだと思う。6月くらいに5000人だけって決めれば良かったと思いますよ。すべて、後手後手に回った。

――首都圏の無観客開催が決まったのは開幕直前の7月だった

榊原 見たくないものが見え隠れしちゃってるんですよね。アスリートたちが国民の人たちに勇気や元気を届けようと頑張って、そこはすごくすがすがしかったし、美しかった。でも、どうしてもみんなが乗り切れていなかったのはそこですよ。

――確かに、いろいろ考えると純粋に楽しむわけにはいかなかった

榊原 すごく日本っぽいんですけど、表向きで言ってることと内情が全然違うんだなっていうのが浮き彫りになっちゃったじゃないですか。エンターテインメントって、裏側は見せたらダメなんですよ。ドタバタが見え隠れするとみんなが冷めちゃうから。そこのところが徹底できなかったんだろうなあ…。

――この五輪が今後のエンタメ業界にどんな影響を与えそうか

榊原 僕らは五輪とともに外国人選手が入ってこられるようになって、ワクチンも行き届いて、コロナが快方に向かうと信じていたけど、どうもそうならなさそうですよね。反面教師的に学ぶことは多かったですけど…(苦笑い)。

――プラスを見つけるのは難しい

榊原 でも、アスリートが積み上げてきた時間や血、汗をかけて戦う姿、勝負論のあるものを見せられると、純粋にそれには見入ってしまうし。それは若い人たちも含めて感動と興奮がストレートに届く物なので「スポーツっていいな」って魅力を再認識するきっかけ、気付きにはなったと思うので、それが最大の功績だと思います。

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