長崎県内大雨被害拡大 雲仙地獄に土砂、倒木 道路損壊相次ぐ

大雨の影響で崩落した町道=14日午前7時12分、川棚町百津郷

 長崎県内では14日も大雨が続き、「緊急安全確保」が発令された6市町をはじめ各地で土砂崩れや道路損壊などが相次いだ。雲仙市小浜町雲仙では、観光名所の地獄の一部が土砂や倒木に埋まっていることが判明した。
 「雲仙温泉観光に大きな痛手だ」。13日夕、裏山が崩れ一部が土砂に埋まった雲仙地獄。雲仙温泉観光協会の宮崎高一会長(58)は「地獄の景観と湯煙は唯一無二」と話し、観光シンボルの早期復活を望む。
 噴気を上げる地獄の岩肌を土砂や木が覆ったのは雲仙地獄地帯の北側に位置する八万地獄。裏山が崩れ、土砂が展望台と地獄をのみ込み、宿泊施設建設現場の一部を損壊させて国道57号まで流出。国土交通省などが夜間に周辺を通行止めにして国道の土砂を撤去。土のうを積んで備えた。
 雲仙地獄と遊歩道は環境省、崩れた山は県が管理。全体の復旧時期は見通せず、営業ができなくなっている3土産物店付近の土砂を優先して除去する方針。
 八万地獄から温泉を引いている一部の旅館やホテルでは、供給が止まるなどの影響が出ており、ある経営者は「源泉が使えずに困るのはもちろんだが、地獄巡りができなくなり温泉街の客が減るのも心配」と困惑している。
 佐世保市若竹台町付近の住民から午前10時ごろ、「擁壁が崩れそうになっている」と119番通報が入った。市によると県営若竹台団地に隣接するブロック状の擁壁にずれが生じた。範囲は幅30メートル、高さ10メートルにわたる。市は崩壊の恐れがあるとして、擁壁の下に位置する民家26世帯に避難を呼び掛けている。
 県災害対策本部などによると14日午後6時現在のまとめで、東彼波佐見町の住宅が近くの土砂崩れの影響で一部倒壊するなど3棟が一部損壊、新上五島町など県内8棟で床下浸水した。がけ崩れは23カ所に上る。

地滑りで崩落した市道の一部=南島原市南有馬町(市提供)

 川棚、波佐見、東彼杵3町では冠水や町道崩落、国道の路面変形などが生じた。南島原市南有馬町では、市道脇の山の斜面が高さ約20メートル、幅約50~100メートルにわたって崩れ、道路をふさいだ。ながさき県民の森近くの長崎市琴海形上町の県道は20~30メートルにわたって陥没した。西海市では大瀬戸町の県道の斜面が高さ約5メートル、幅約30メートルにわたり崩れ、尻久砂里(しりくさり)海浜公園に向かう市道でも土砂崩れが起きた。
 県内の高速道路は午前11時から全区間で通行止めに。島原半島や西海市を中心に一部の国道や県道なども全面通行止めになった。JR九州は県内発着の全ての便を運休。海の便では、九州商船がジェットフォイルや高速船のほとんどの便を欠航。空の便も欠航が相次いだ。JR九州は15日も始発から県内発着のすべての便の運行を見合わせ、松浦鉄道も見合わせる。


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