2日目にクラッシュを喫した勝田貴元「もっと強くなって戻って来る」/WRC第8戦ベルギー

 8月13~15日、WRC世界ラリー選手権第8戦がベルギーが行われ、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに参加してシリーズ全戦にトヨタ・ヤリスWRCで参戦中の勝田貴元は、総合6番手で迎えた競技2日目のSS10でクラッシュを喫しリタイアとなった。

 ベルギー西部の都市イープルを中心に行われるイープル・ラリーは、1965年に初開催された伝統あるターマック(舗装路)ラリーだ。同イベントは昨年初めてWRCのカレンダーに組み込まれたが、新型コロナウイルスの影響で開催がキャンセルとなっており、2021年に1年越しでの世界選手権初開催が実現した。

 初めてWRCの1戦として行われたこの『イープル・ラリー・ベルギー』は、主に道幅が狭く、両脇に深い溝を有する農道を舞台に争われる高速ラリー。コーナー部では“インカット”によって泥や砂利がコースに掻き出され、グリップレベルを把握するのが非常に難しいラリーとして知られている。

 このラリーでの経験がない勝田にとって今ラウンドは厳しい条件となったが、それに加えて今戦は通常、彼のコドライバーを務めるダニエル・バリットが前戦エストニアでの負傷から復帰できず。そのため勝田は26歳のキートン・ウイリアムズをバリットの代役として迎え、ベルギー・ラウンドに臨むことになった。

 ミスをしやすいトリッキーなステージが多いため、勝田は他のラリーよりもやや保守的なアプローチでラリーをスタートした。そのなかで初日のデイ1は総合7番手で走破。続く土曜のデイ2では、この日のオープニングステージとなったSS9でひとつ順位を上げ総合6番手につける。

 しかし2本目のSS10を走行中、路面の凹凸でクルマのコントロールを失い、スピードを落とせないままコースオフ。道路脇の電柱をなぎ倒す大きなクラッシュを喫した。
 
 幸い、勝田と今回初めて実戦でコンビを組んだウイリアムズに怪我はなかったものの、ヤリスWRCは大きなダメージを負ってしまう。勝田は翌日の再出走を諦め、リタイアすることとなった。

「とても難しく、厳しいラリーでした」と語った勝田は、その中でも新しい経験を積むことができたという。

「グリップレベルを予測するのは非常に困難で、道に掻き出されたグラベルのせいでさらに難しいセクションもありました。そのためステップ・バイ・ステップで前に進む必要がありましたが、金曜日には多くのことを学び、新しい経験を積むことができました」

「土曜日はいくつかのセクションでもう少しプッシュし、ドライビングのフィーリングを高めたいと思っていました。しかし、残念ながらSS10を走行中、ステージのスタート近くの、高速でありながら道幅の狭いセクションでクラッシュしてしまいました」

主に農道を舞台に争われたWRC第8戦イープル・ラリー・ベルギー。最終日はスパ・フランコルシャンでの戦いとなった。

■「これもまた学習の一部」とユホ・ハンニネン

 勝田はクラッシュの状況を次のように説明した。

「いくつかバンプがあったのですが、クルマが着地して下に押しつけられた状態になった時、コーナーを曲がりきれず側溝に突っ込んでしまいました。大きなクラッシュだったにもかかわらず、ふたりとも無事だったのは幸いでした」

「しかしながら、ラリーにおいてそのようなミスは絶対に許されません。チームには本当に申し訳なく思っています。とても残念ですが、今回の経験で勉強になりましたし、もっと強くなって戻って来るつもりです」

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムのインストラクターを務めるユホ・ハンニネンは、勝田が自信を持てずにいたと述べた。

「イープルは他のラリーに比べて非常に難しくて独特なので、ラリーをスタートした時にタカはあまり自信を持てていなかった。私は彼のアプローチを尊重し、あまり早い段階からプッシュせず、スピードを上げるまでに少し時間を要することを受け入れていた」

「しかし、このような道では、ほんの小さなミスが大きなアクシデントにつながる可能性があり、残念ながらそれが実際に起こってしまったんだ」

「彼は少しラインを外しただけだったが、限界まで攻めていなくても、こういったことは起こり得る。これもまた学習の一部だし、タカは今回良い経験を積むことができたと思う」

「道幅が狭いターマックではあまり自信を持てなかったようだが次回、同じようなステージを走る時には、たとえそれがイープルでなかったとしても、今回の経験を生かしてもう少し楽に走ることができるだろう」

 依然としてドライバー選手権でランキング6位につけている勝田が挑むWRCの次戦第9戦は、ギリシャで行われる『アクロポリス・ラリー』だ。同国中部の都市ラミアを中心に行われるこのグラベル(未舗装路)ラリーは、非常に荒れたステージが多い、ラフグラベルラリーとして知られ、勝田にとってはまた新たなチャレンジとなる。開催日は9月9~12日だ。

チームスタッフと話をする勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC) 2021年WRC第8戦ベルギー
WRC第8戦ベルギーで勝田貴元のコドライバーを務めたキートン・ウイリアムズ
勝田貴元(トヨタ・ヤリスWRC) 2021年WRC第8戦イープル・ラリー・ベルギー

© 株式会社三栄