阪神とヤクルトは遊撃、楽天は捕手…“ポジション別得点力”で見える各球団の課題は?

楽天・太田光(左)と阪神・中野拓夢【写真:荒川祐史】

セイバーメトリクスの指標「wRAA」を用いて各球団のポジション別得点増減を検証

東京五輪の中断期間が明け、ペナントレースが再開されたプロ野球。各球団が90試合前後を消化し、いよいよシーズンも佳境に入ってくるセ・パ12球団だが、ここまでの戦いで“課題”となっているポジションはどこなのか? 同じ打席数を同リーグの平均的な打者が打つ場合に比べてどれだけ得点を増減させたかを示す「wRAA」というセイバーメトリクスの指標を用いて検証してみよう。

なお、このデータは、セイバーメトリクスの指標を用いて分析などを行う株式会社DELTAのデータを参照した。まずセ・リーグだ。

首位を走る阪神で特筆すべきは一塁手だ。主にマルテが起用されている一塁手は12球団トップの「wRAA」22.8をマークしており、阪神にとってのストロングポイントとなっている。ルーキー・佐藤輝の右翼は7.0、近本の中堅は7.8とまずまず。大山の三塁、サンズの左翼もプラスとなっている。

際立つ中日の苦況、二塁、遊撃、左翼、右翼で大幅マイナス

その一方でポジション別攻撃力でマイナスになるのは梅野の捕手と、主に糸原が入る二塁、ルーキーの中野が守る遊撃。捕手は-4.2、二塁は-4.4とそれほどでもないが、遊撃は-8.9とややマイナス幅が大きくなる。ただ、他球団に比べると大きく落ちるところはなく、首位に立つチーム状況を表していると言える。

2位の巨人はウィーラーの一塁、岡本和の三塁、坂本の遊撃、丸の中堅が大きなプラスとチームの武器に。捕手と二塁がマイナスではあるものの、大きな痛手ではない。3位のヤクルトは山田の二塁、村上の三塁、オスナが中心の一塁、塩見の中堅でアドバンテージを生む。一方で元山、西浦らが起用される遊撃が-10.6となる。

4位の中日はポジション別攻撃力で見ても、打力が弱いことが良く分かる。大きなプラスとなるのは木下らの捕手、ビシエドの一塁だけ。大島の中堅は0.7と僅かなプラスだ。一方で二塁、遊撃、左翼、右翼のマイナスは2桁になっている。

広島は鈴木誠の右翼は23.5でリーグトップタイ。會澤、坂倉らが中心の捕手も2.2でプラス。その一方でレギュラーが固まらない一塁手が-11.3と大きなマイナス。遊撃、左翼もマイナスだ。最下位のDeNAは捕手と遊撃が課題。佐野の左翼、オースティンの右翼が大幅なプラスだが、捕手と遊撃のマイナスが大きい。

パ・リーグ首位のオリックスだが、多くのポジションで得点力はマイナス

パ・リーグに目を移してみる。首位のオリックスは吉田正の左翼と杉本の右翼が大きなプラスをもたらしているが、意外にも、一塁、二塁、遊撃、中堅、DHと軒並み大幅なマイナスになっている。リーグ優勝に向けては吉田正、杉本以外のポジションの奮起が求められそうだ。

楽天は浅村の二塁、茂木の三塁、島内の左翼で大きなプラスを生む。唯一の課題を挙げるとすれば、捕手か。太田が最多の72試合に出場するが、wRAAはリーグワーストの-16.8。その他のポジションは平均的な数字が出ており、捕手の大きなマイナスだけが気になるところか。

3位のロッテは中村奨の二塁、マーティンの右翼、荻野や角中が入る左翼がチームのストロングポイント。一方で捕手、三塁、遊撃がやや弱い。4位のソフトバンクだが、ポジション別の攻撃力を見ると、大きなストロングポイントがない。栗原らの左翼や柳田のいる中堅、右翼はプラスだが、プラス幅は大きくない。一方で遊撃は大きなマイナス。捕手、二塁もマイナスになっている。

西武は森の捕手が25.1と12球団イチのプラス。山川の一塁も7.9のプラスになっている。その一方で外野の3ポジションはいずれも大きなマイナスだ。最下位の日本ハムは近藤、王らが入るDHだけがプラス。その他のポジションはほぼマイナスとなっており、苦しい状況がうかがえる結果となっている。

【表】12球団のポジション別「wRAA」の詳細な一覧はこちら

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(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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