五島市の移住支援策 夜間も相談に対応 住宅確保に課題、情報提供呼び掛け

夜のオンライン相談会の準備をする市職員=五島市役所

 移住促進に力を入れる長崎県五島市は、新型コロナ禍で対面での相談会の開催が難しいため、オンライン相談会を日中だけでなく、夜間にも実施している。一方で、UIターン者の住宅確保が課題となっていて、市は空き家や、空き家になりそうな家に関する情報提供を呼び掛けている。

◆反応上々
 午後8時、ほとんどの職員が退庁した市役所の会議室。職員が画面に向き合っていた。市が5月下旬に開催した「夜のオンライン相談会」。それまで月3回、日中に開いてきたが、仕事や家事を終えて気軽に参加してもらえるようにと初めて企画した。
 関東や九州など10~50代の5人が参加。相談に対応するのは、移住してきた市職員。内容は、島暮らしの魅力から五島市の物価、準備する物までさまざま。休憩を挟みながら午後11時まで続いた。参加者の反応も上々で、市地域協働課の担当者は「実生活に即した移住経験者(職員)のアドバイスが強みになっている」と胸を張る。
 7月には「夜の就職セミナー」も開催し、全国から30~40代の12人が参加。同市に移り住み企業などで働く「先輩」3人が、移住しようと思ったきっかけ、実際に暮らした感想などを伝えた。今月下旬には、市内事業所の採用担当者向けの相談会も開催する予定。採用活動の際に、市の移住支援策も伝えてもらうなどして島への就職を間接的にバックアップする。同課は「新型コロナをきっかけとした移住希望者が増えるとみられ、情報発信に力を入れたい」としている。

◆「社会増」
 市によると、2015年4月~20年3月までの5年間で、Uターン者を含め784人が移住。7割以上が30代以下の若い世代(男女半々程度)で、移住者の8割超が今も定着している。19、20年は転入が転出を上回る「社会増」となった。
 こうした中、課題となっているのが住宅の確保だ。2年前に東京から移住した男性(39)は、五島市内で知り合った人から住宅を紹介してもらい比較的スムーズに住まいを得られたが、「住む家がないと、移住を悩んでいたかも」と話す。
 そこで、市が目を付けるのが空き家。市内には1500戸あるとされ、空き家を貸したり売りたい人と、借りたり買ったりしたい人とをつなぐ空き家バンクを15年度から開始。20年度は67件の登録のうち、41件が賃貸や売買に結び付いた。6年間の累計でも登録232件に対し、成約は175件。民間のNPO法人とも協定を結び、空き家の利活用を進めようとしている。
 ただ、「まだ不足している」(市)のが現状。市職員らが、住民の情報を頼りに、空き家を見て回るなどして登録を呼び掛けている。空き家バンクに登録すると、リフォーム補助金の対象となる制度も導入。同課の庄司透課長は「資産としての利用価値を所有者の方に丁寧に説明していきたい」と話す。

空き家の状況を確認する市職員=8月、五島市内(市提供)

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