資産総額1500万を貯めた30歳。憧れのセミリタイアを実現する運用プランは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、30歳、会社員の女性。資産総額は1,500万円。将来は独身かDINKSで、セミリタイアに憧れているそうですが、実現可能でしょうか? FPの秋山芳生氏がお答えします。

30歳、独身会社員です。将来は、このまま独身かDINKSを想定していますが、セミリタイアにも憧れています。

現在貯金は1,300万円。投資は200万円。投資の状況は、毎月iDeCo2万3,000円+つみたてNISA3万3,000円+ロボアド2万4,000円。個別株は、国内株を、好きかつ成長しそうな企業のみ所持、配当金+貸株+キャピタルゲインで年間10万円レベルです。投資信託と個別株のバランスは現状半々。

現金と投資信託と個別株のバランスはどうでしょうか? 金など、他の投資も検討したいと思っています。

その他、親戚から家を借りているため家賃が安い。スマホ利用料は月数百円。美容費月1万円以下という生活環境です。

よろしくお願いいたします。

【相談者プロフィール】

・女性、30歳、独身、会社員

・住居の形態:賃貸(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:35万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:数万円のインセンティブ程度

・毎月の世帯の支出の目安:約15万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:4万円

・食費:4万円

・水道光熱費:5,000円

・通信費:5,000円

・お小遣い:3万円

・その他:3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:12万円

・毎月iDeCo2万3,000円+つみたてNISA3万3,000円+ロボアド2万4,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:0円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,300万円

・現在の投資総額:200万円

・現在の負債総額:0円


秋山:ご相談頂きありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。

ご相談者さまは、親戚から格安で家を借りているので固定費が低く、支出は大きく黒字のようです。資産総額は1,500万円ありますが、貯金と運用資産のバランスについてどのようにするべきかを悩まれています。そして、このまま一生独身か、結婚しても支出が増えない想定であれば、セミリタイアが可能かというご相談ですね。

最近ではFIRE(Financial Independence, Retire Early)と言われる経済的に自由な状態を目指すムーブメントがありますが、その中でも経済的には自立しながら好きな仕事を行う「サイドFIRE(=セミリタイア)」と言われるカテゴリーもあります。このままいくと、いつごろセミリタイアが実現可能かを、一緒に考えていきたいと思います。

まずは家計をチェック。30歳で資産1500万はかなりの貯蓄体質!

現在、毎月の手取り収入は35万円で、支出は約15万円とのことです。毎月の収支は20万円の黒字となり、年間240万円資産が増える計算になります。30歳という若さで総資産が1,500万円とのことですので、かなり貯蓄体質であると言えます。

毎月の家計の内訳を見ても、無駄な保険には加入しておらず、通信費もスマートフォンと家のインターネット回線を合わせて月に5,000円に抑えられ、固定費が極めて低い状態と言えます。特に、住宅費は家を親戚から借りているので4万円と非常に安く抑えられています。

固定費全体が低いと、毎月の支出が抑えられ、「貯蓄体質」になっていきますが、ご相談者さまの家計はその良い例と言えますね。

必要な金額以上は、投資に回してもOK

資産1,500万円の内訳は、1,300万円の現金と、200万円の運用資産となっています。ある程度の現金を持っていることは、資産運用を行う上で大前提になりますが、少しバランスが悪く感じます。現金で持っておきたい金額は、「生活防衛費」として毎月の支出の6カ月分と、直近3年から5年で現金で使うことが決まっている金額(引っ越し費用、車購入費、海外旅行、住宅購入の頭金など)です。

それ以上の現金は、タイミングを見て投資に回しても良いでしょう。現在30歳と、まだお若いので、長期視点で考えると、必要以上の現金を持ち続けることで、将来インフレ負け(インフレによって現金の価値が下がる)して損をしてしまう可能性もあるためです。

投資は個別株よりも投資信託をコアに

投資200万円の内訳は、個別株と投資信託と半々とのことですが、長期で資産形成を行うのであれば、投資信託の割合を増やして行ったほうが良いと思います。言わずもがなですが、「1社」に投資する個別株と、「複数社や市場インデックス」に投資可能な投資信託では、個別株のほうが価格変動リスクが高くなります。長期で資産運用を成功させる資産ポートフォリオを組んでいく上で、まずは世界のインデックスに分散したグローバル分散投資を中心とし、一部を個別株や金、その他の資産で構成していくのが良いでしょう。

「コアサテライト戦略」と言いますが、長期のグローバルインデックス投資を「コア」として資産の70〜80%程度を配分します。そして、「サテライト」として、資産の20〜30%を個別株やアクティブな投資信託、金などに配分するものです。一つの参考になされてもよいかもしれません。

セミリタイアは可能?

セミリタイアが可能かというご質問についてですが、十分に可能であると思います。

一般的にFIREの目安となるのが、年間生活費の25倍の資産をつくることと言われています。現在の年間支出は180〜200万円ほどですので、25倍の5,000万円の資産をつくり、その資産を運用しながら5,000万円の4%を取り崩していけば多くの場合資産が長期で枯渇しないといわれています。

毎月35万の収入から、現金を12万円貯蓄し、iDeCo2万3,000円+つみたてNISA3万3,000円+ロボアド2万4,000円の8万円を投資に回しています。毎年期待利回りが複利で3〜5%で運用できれば、今から15年の間に貯金と合わせておよそ5,000万円の資産形成が可能となります。

5,000万円の資産を作ることができたら、米国株式のインデックスや全世界の株式インデックスを中心に運用して行くと良いでしょう。完全に運用益のみで生活しようとすると、市況によって不安定になるので、無理のない仕事をしながら「ある程度の収入」が得られると、より生活基盤は強固になります。

複数の収入源を持つことを意識して

セミリタイヤやサイドFIREは、毎年の収入(または取り崩し可能な余剰資産)よりも支出を少なくできるかがとても重要になります。

ご相談者さまの場合は、年間180〜200万円と、支出がかなり少ない状況ですので、生活費の25倍という資産形成の目標額も5,000万円と、実現可能性が高い数字になっています。生活費は、現在親戚から借りている住宅をいつまで借りられるのかで上がる可能性もありますし、結婚をして生活環境が変わったり、お子さんが産まれたりすることがあれば教育費なども発生するので、変化していくことが考えられます。

ただし、完全リタイアではなく、月に10〜15万円でも労働収入があれば人生による変化を吸収できますし、残りの生活費を運用益や配当から捻出することも可能です。

今から人生の楽しみを作っておくことも大事

また、「セミリタイアをして何をするのか」ということも考えておくと良いと思います。時間だけができても、社会に貢献する時間が少ない状態が続くと、それはそれで非常に退屈な可能性もあります。趣味に打ち込むことや、人間関係やコミュニティを形成すること、またはセミリタイアして行う仕事自体が自分のやりたいことになっていると、より楽しみながら、長期のセミリタイア生活を成功に導くことができるはずです。

これらは、セミリタイアせずともできることでもあります。今という時間は戻ってこないので、「セミリタイアしたら楽しむ」ではなく、「今から、できることを楽しむ」ということも、非常に重要な視点になると思います。

どこか、参考になれば幸いです。

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