安田純平氏「シリアと同じことになる」 政権交代アフガニスタンの後ろ盾は中国とロシア

安田純平氏

アフガニスタンで反政府武装勢力タリバンが大統領府を制圧して政権を掌握した。恐怖政治を恐れ市民が国外脱出しようと空港に殺到するなど混乱を招いている。今後、タリバン政権は国際社会にどんな影響を及ぼすのか。2015年から3年4か月にわたってシリアで武装勢力に拘束され、解放された経験を持つジャーナリストの安田純平氏(47)がタリバン政権とどう相対するべきかを語った。

女性の人権を侵害する恐怖政治復活への不安の声が上がっているが、AP通信によるとタリバンは全てのアフガン人に恩赦を出し、これまで抑圧してきた女性も政府の枠組みに参加するよう促すと発表。包括的なイスラム政権樹立への意欲を示し、融和を演出する狙いがあるとみられる。

「9・11の前はアフガニスタンって世界中の人が無視してたところだった。今回は世界中が注目しているので、タリバンとしては周りからどう見られるかは意識すると思う。希望的観測としては、ある程度、国際的に承認されるようなやり方をするんじゃないか」と安田氏は分析する。一方で不安もある。タリバンの政権掌握を許した米軍の撤退について「完全に敗北。タリバンが全部制圧なので9・11の前に戻っちゃう。なんのためにやったんですか。今後は中国が監視するので結局、中国の影響下に入ったって話。アメリカが影響力をどんどん失っている」と厳しい目を向ける。

テロの温床になる危険については「対外的なものはやらないと思います。それをやってしまうと中国、ロシアもさすがに支援はできなくなると思う」と否定した。一番の懸念材料は中国とロシアの存在だ。「中国とロシアが後ろ盾になっていくと欧米も手出しできないので、シリアと同じことになる。どれほど自国民の人権を侵害しようと人を殺そうとも欧米がまったく手を出せない状態になってくる。アフガニスタンにおいても米軍が手を引いちゃったわけですから、この先、どんなにひどいことになろうとも、どうにもできなくなる恐れはあります」と警鐘を鳴らした。

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