「至誠一貫」兄弟で柔道8段に昇段 松添俊一さん 86歳、邦廣さん 77歳

「みんなの支えがあってこそ」と昇段を喜ぶ松添俊一(左)、邦廣兄弟=長崎市、長崎医療こども専門学校

 切磋琢磨(せっさたくま)しながら歩んできた柔の道。長年の指導実績などが評価され、兄弟そろって8段に昇段した。兄の松添俊一(86)=諏訪ノ森柔道教室長=、弟の松添邦廣(77)=長崎医療こども専門学校長=は「みんなの支えがあってこそ」と、それぞれ家族や周囲への感謝の言葉を口にした。
 長崎市出身。俊一は映画「姿三四郎」の影響で柔道家に憧れたが、中学までは野球に打ち込んだ。軍事色が強いという理由で、戦後しばらくは学校現場で武道が禁止されていたのが理由。高校生のころ、ようやく柔道着に袖を通すことができた喜びは忘れられない。基礎から学び、その奥深さに夢中になった。
 その背中を見て育った九つ下の邦廣。強くて温厚な兄を目指して稽古に汗を流した。「大外刈りは勇気を持って技を掛けないと」「機敏な動きを生かせるのは背負い投げ」-。食卓では兄と柔道談義に花を咲かせた。進路は迷わず兄と同じ道へ。長崎東高から長崎大へ進み、地元長崎で高校教諭になった。
 柔道部顧問として教え子を何度も全国高校総体(インターハイ)や国体などの大舞台へ導いてきた2人。定年退職後、俊一は自ら立ち上げた諏訪ノ森柔道教室で、邦廣は長与尚武会で、地域の子どもたちの育成に努めてきた。
 1999年にそろって7段となり、20年以上が過ぎた。「正直、8段は想定していなかった」(俊一)が、県や九州の柔道関係者から懇願され、これまでの指導実績などを書類にまとめた。講道館から届いた段証書はもちろん、家族や部下から贈られた手作りの色紙も宝物となった。
 柔道について、俊一は「礼に始まり礼に終わる。人を尊重する気持ちが育つ」、邦廣は「体も心も柔軟性のある人間力が高まる」と魅力を語る。大切にしている言葉は同じで、最後まで誠意を尽くすという意味の「至誠一貫」。その思いをこれからも、次世代へ伝えていくつもりだ。

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