阪神・伊藤将を勝てるピッチャーに育てた名将の〝左腕育成秘伝レシピ〟

球の出どころが見えにくい伊藤将の特徴的なフォーム

さすが名将の〝味付け〟だ。阪神・伊藤将司投手(25)が18日のDeNA戦(東京ドーム)に先発し8回を4安打2失点。98球の省エネ投球で6勝目(5敗)をマークし、チームを4連勝へ導いた。

ルーキーながら2桁勝利も射程に捉えた左腕を矢野監督も「間違いなく今日のMVP。8回まで投げ切ったことも含めてね」と手放しで称賛。中継ぎ陣の消耗を防ぎたい真夏の6連戦で価値ある仕事をした伊藤将も「低めに丁寧に投げることを意識した。目標の2桁勝利まであと4勝なので、一戦一戦勝てるようにしたい」と試合後は胸を張った。

テークバックが小さく球の出どころが見えにくい特徴的なフォームは、横浜高在籍時に習得したものだ。同校で長く監督を務めた高校野球界きっての名将・渡辺元智氏(76)は横浜高入学当時の伊藤将を「ピッチャーとしては3番手、4番手の評価でした。コントロールはそこそこ良かったのですが性格的にも控えめで球速も140キロ出るかどうか。『甲子園のマウンドに立てるかなあ、どうかなあ』という感じでした」と回想する。

浅間(日本ハム)、高浜(日本ハム)、渡辺佳(楽天)ら、後にプロ入りを果たすメンバーをズラリとそろえた当時の同校野球部内で、伊藤将は決して目立つ存在ではなかった。そんな左腕を「勝てるピッチャーに育てるために」たたき込んだのが現在の投球フォームだ。

「テークバックに入った時に左のももの裏にボールを隠す。そのまま腕を振り上げてもう一度頭の裏に隠す。そこからヒュッと投げれば打者はタイミングは取りにくくなる」(渡辺氏)

指導する上でひな型としたのは同校野球部OBでロッテなどで活躍した成瀬(現BC栃木)。「伊藤将は成瀬とまったく同じでした。性格的に寡黙で球がそこまで速くなかった点もうり二つ。制球力を磨くために、ホームベースの上にボールを置いてそこにボールが当たるまで何球も投げさせるなど、まったく同じ練習をさせました」と渡辺氏は明かす。

「愛甲(元ロッテ、中日)から始まってウチは伝統的に左腕が多いですからね。大学―社会人を経て伊藤将は下半身も強くなっている印象。このまま頑張ってほしいものですね」と教え子の活躍に目を細める渡辺氏。名門校の〝左腕育成秘伝レシピ〟が虎のVロードを支えている。

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