【夏の甲子園】開幕直前コロナ禍直撃の作新学院・田代主将「なってしまった人間の分まで野球をやりたいという一心でした」

高松商に敗れた作新学院

結束が強い分、逆境でも勝ちたかった。第103回全国高校野球選手権大会(甲子園)は19日に2回戦が行われ、第4試合に10大会連続出場の強豪・作新学院(栃木)が登場。高松商(香川)との打ち合いに屈して7―10で敗れたが、コロナ禍に直面したナインたちは仲間思いの懸命なプレーを見せた。

作新学院は開幕直前、部員3人の新型コロナ陽性が判明。内外に激震が走った。「集団感染」ではなく「個別感染」と判断されたため、出場の準備を進めてきた。17日までに行ったPCR検査でチーム関係者全員が陰性。晴れ舞台に立つことを許された。

田代健介主将(3年)は聖地での初戦を迎えるにあたって、こう胸に刻んだという。「あったことは仕方がない。なってしまった人間の分まで野球をやりたいという一心でした」

とりわけ横のつながりが強い世代だった。ベンチ入りメンバー20人全員が3年生。チームを率いる小針監督も「県大会も3年生20人で乗り越えてきた。甲子園大会も本当にまとまって一体感を持ってやってきた」と振り返り、コロナ禍の動揺よりも当該選手の思いをくんで戦うナインの姿に目を細めた。「こういうことになったが、一人ひとりがチームが一つになるためにカバーしていこうと。何とか試合をさせていただく準備をみんなでやっていこうということで、逆に心が一つになった」。

敗れこそしたが、一時5点差をつけられながら追いつく驚異的な粘りを見せた。コロナ禍だけでなく、度重なる順延に伴う日程再編で当初第1試合の予定が第4試合に変更された。相次ぐ想定外の有事に直面した夏。「この経験を生かしてやってきたことは無駄ではない。これからの人生に生かしていきたいです」。田代主将はそう言って、涙を拭き、顔を上げた。

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