エースが完全復活へ 巨人・菅野が払しょく目指す〝哀れみの声〟とは

復活のノロシを上げた菅野

いざ、復権へ――。巨人・菅野智之投手(31)がどん底から再スタートを切った。19日に人生2度目となる二軍公式戦で先発し、約1か月半ぶりに実戦復帰した。前半戦だけで出場選手登録を4度抹消されるまさかの大ブレーキ。今後はリーグ2位からの巻き返しへフル回転だけでなく、大きく傷ついたエースの〝汚名返上〟も求められそうだ。

背番号18が復活のノロシを上げた。「50球」の球数制限が設けられた中、二軍首脳陣の承諾を得て4回まで61球を投じて3安打5奪三振。不運な三塁打も絡んで1点を失ったが、最速は150キロ、降板直前の4回も148キロを計測した。

菅野は「出力もだいぶ出るようになりましたし、最後の方まで出力は落ちなかったので。ずっと調子が悪い中で交流戦で投げていて、どうしても最後の方になると出力が落ちて…。それは今日一つ克服した感じがあります」と力を込めた。

再出発の舞台となったのは、イースタン・リーグのロッテ戦(ジャイアンツ球場)。菅野が二軍戦に出場すること自体がレアケースで、入団2年目の2014年9月4日以来、実に2541日ぶりだった。菅野にとっての〝特例措置〟が取られたのは、調整ミスが繰り返されたため。全幅の信頼を置いた首脳陣が本人に調整を一任し、二軍戦登板を経ずに昇格させたものの結果が伴わず、宮本投手チーフコーチが「本人に任せて2度失敗した。チームメートにも迷惑がかかる」と他の選手と同様の復帰ルートを命じた。

今季はここまでわずか2勝。足踏みしただけに一軍復帰後は逆転優勝へ、大車輪の活躍を求められる。同時に傷ついた「エース」の称号を修復していく。登録と抹消を繰り返すうち、球界内からは同情の声まで寄せられていたからだ。

菅野は東京五輪の日本代表に選出されたが、最終的には熟考した末に「コンディション不良」を理由に辞退を申し入れた。その当時「早く辞退しろ」などの厳しい批判を浴びせられた一方で「そもそも侍ジャパンは、誰がどう見ても本調子じゃない菅野をなぜ選んだのか。もちろん光栄なことだろうけど、選んだ以上は取り下げることはできないし、菅野が〝迷惑をかける〟と思えば辞退するしかない。あれだけ調子が悪い菅野に、追い打ちをかけるように重い決断させるのはかわいそうだ」と心情を察するセ球団関係者もいた。

ただ、菅野は周囲から同情される〝哀れみのエース〟など、これっぽっちもうれしくないだろう。この日の登板前、原監督は「内容(次第)でしょう」との条件付きながら、早ければ26日の広島戦(東京ドーム)での復帰の可能性を示唆していた。相手を圧倒する無双エースの逆襲がもうすぐ始まりそうだ。

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