笑福亭仁鶴さんの絶妙なさじ加減 不在で「つまらなくなった」番組も

亡くなった笑福亭仁鶴さん

落語家・笑福亭仁鶴(本名・岡本武士)さんが17日、骨髄異形成症候群のため、大阪府内の自宅で亡くなっていたことが分かった。64歳だった。仁鶴さんが特別顧問を務める吉本興業が20日、発表した。上方落語家の存在を全国に広め、吉本興業の「中興の祖」と呼ばれた。

在阪の芸能関係者は仁鶴さんの功績について「同世代のスタッフとチーム化して、多くの人気番組をつくり上げたタレント落語家のパイオニア。落語家がタレントとしてテレビに出たり、レコードを出したりと活躍の場を広げ、桂文枝さんや笑福亭鶴瓶さんなど多くの落語家がその道に続いた。仁鶴さんが作り上げた番組の手法を模倣して、多くの長寿番組が作られていった。その結果、吉本興業の経営を軌道に乗せたので、吉本の幹部も仁鶴さんだけは別格の扱いです」と語る。

1985年に始まったNHKの法律バラエティー番組「生活笑百科」では30年以上司会を務め、「四角い仁鶴がまぁ~るくおさめまっせ~」のセリフで親しまれた。

70歳を過ぎてからも落語の独演会を開催し、大坂・なんばグランド花月で披露した「不動坊」は後輩たちが継承する上方落語の代表作ともいわれた。だが2017年6月に隆子夫人と死別。前後してレギュラー出演していた「生活笑百科」や「大阪ほんわかテレビ」(読売テレビ)を休養し、公の場に最後に姿を見せたのは18年の京都国際映画祭だった。

スタッフとチーム一体で多くの人気番組を世に放ち、一時代を築いた仁鶴さんの死で、関西のテレビ界にも新たな動きが起こるかもしれないという。

テレビ局関係者は「『生活笑百科』には仁鶴さんと親しいスタッフが参画しているが、『仁鶴さんがいなくなってつまらなくなった』との声も聞かれている。スタッフとチームで成長し、長きにわたって老若男女に愛されるコンテンツをつくってきたが、仁鶴さんがいなくなり、絶妙なさじ加減をとれる人がいなくなった。今後はどうなるか分からない」と話す。

落語家にさまざまな活躍の道を切り開き、吉本興業を高みに引き上げた偉大なる落語家の死は、関西のお笑い番組に多大な影響を与えそうだ。

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