3ヶ月ルール!?「繰り上げ当選」が行われるケースとその事例

選挙で当選してもやむを得ない事情により辞職しなくてはならない、もしくは続けられない状況になることがあります。そういった場合、欠員を補填するため「繰り上げ当選」が発生するケースがあります。

この記事では繰り上げ当選とは何か、行われる場合、行われない場合について事例を交えて解説いたします。

繰り上げ当選とは?

繰り上げ当選とは、何らかの理由で選挙の当選者が欠けてしまった場合、選挙の種類や時期により別の候補者が当選することをいいます。

当選者が欠けてしまう理由としては、当選者の辞職、もしくは死亡が考えられます。

繰り上げ当選が行われる場合

・衆議院議員選挙(小選挙区)、地方公共団体の長の選挙の場合

現在、原則として繰り上げ当選は行われません。ただし、当選者と同数の票を獲得してくじの結果落選した人がいた場合は、当選者の辞職等で任期中に欠員が発生した場合繰り上げ当選の対象になります。

・参議院議員選挙(選挙区)、地方公共団体の議会の議員の選挙

選挙が行われた期日から3ヶ月以内に欠員が出た場合、次点で得票数の多い候補者が繰り上げ当選になります。

3ヶ月を超えてから欠員が出た場合は、当選者と同数の得票があり、くじにより落選になった候補者がいるときに限り繰り上げ当選が行われます。

・衆議院議員比例代表選挙(比例代表)、参議院議員選挙(比例代表)

当選した議員の任期中に欠員が出た場合、比例代表選挙の名簿登載者で次点の得票数の候補者が繰り上げ当選します。

繰り上げ当選が認められない場合

・衆議院議員選挙(小選挙区)、地方公共団体の長の選挙

原則として繰り上げ当選は認められません。例外として、同数得票によりくじで落選した人がいる場合は繰り上げ当選の対象になります(前述)。

・参議院議員選挙(選挙区)、地方公共団体の議会の議員の選挙

3ヶ月を超えてから欠員が出た場合は繰り上げ当選は原則として行われません。当選者と同数の票を獲得した候補者がいた場合のみ繰り上げ当選が行われます(前述)。

・衆議院議員選挙(比例代表)、参議院議員選挙(比例代表)

欠員となった議員の政党の名簿登載者が全員当選した場合、繰り上げ当選は行われません

また、衆議院議員選挙で小選挙区と比例代表選挙の両方に立候補し、小選挙区での得票数が供託金没収点を下回った場合も繰り上げ当選の対象にはなりません。

事例1:辞職による繰り上げ当選

2019年、参議院議員選挙で当選していたNHKから国民を守る党(当時)の立花孝志氏が議員を辞職しました。これは参議院議員選挙の埼玉選挙区補欠選挙に立候補するためでした。

立花氏は比例代表で当選しており、次点で得票していた浜田氏が自動的に参院議員の議席に繰り上げ当選しました。

比例代表選挙では欠員が定数の4分の1になった場合に補欠選挙が行われます。

そのため、立花氏の自動失職の場合には補欠選挙ではなく、NHKから国民を守る党の名簿登載者の中で次点の浜田氏が繰り上げ当選になりました。

事例2:死去による繰り上げ当選

2019年9月に自民党の宮川典子氏が亡くなりました。

宮川氏は衆議院議員選挙(比例代表)での当選者であったため、自民党の名簿の順位に従って次点の畑実氏が繰り上げ当選しました。

事例1と同様に比例代表選挙での欠員の場合には名簿順位の次点の候補者が繰り上げ当選するため、畑実氏が当選しています。

比例代表選挙で補欠選挙が行われたことは今までにありません。

事例3:繰り上げ当選にならなかった事例

立憲民主党の参議院議員であった羽田雄一郎氏が新型コロナウイルスにより2020年12月に亡くなりました。

羽田氏は2019年7月の参議院議員選挙(選挙区)で当選していたため、繰り上げ当選は行われず、補欠選挙が行われました。

繰り上げ当選が行われなかったのは、羽田氏が当選から3ヶ月以上経過した後に死去しており、同数の票を獲得していた候補者がいなかったためです。

まとめ

欠員が出た場合に「繰り上げ当選」が行われるケースについて、事例を用いながら解説しました。

衆議院議員や首長の選挙では、原則として繰り上げ当選は行われません。

参議院議員(選挙区選出)や地方議員の欠員の場合には、当選から3ヶ月以内の欠員であれば繰り上げ当選が行われます。

衆議院・参議院ともに比例代表選挙で当選した議員の欠員の場合には欠員者と同じ政党の名簿に従い次点の候補者が繰り上げ当選します。

なお、参議院議員(選挙区選出)や地方議会の議員の場合、3ヶ月を超過して欠員が出た場合には基本的に繰り上げ当選ではなく補欠選挙になります。

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(執筆協力:佐々木ダイスケ

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