「実際に避難」対象者の0.06% コロナ対策進むも不安拭えず 長崎大雨

長与町は感染症対策として仕切りを避難所に導入したが、避難者は少なかった=17日午前11時32分、町武道館

 新型コロナウイルス感染が急拡大する中、長崎県内各地で被害が相次ぐ記録的な大雨が降った。各自治体は定員を半減して仕切りを配置したり、混雑状況を即時に確認できるようにしたりするなど避難所の感染防止対策を進めている。だが、5段階の避難情報でレベル3に当たる「高齢者等避難」以上が県内19市町の約58万2千世帯、126万2千人に出され避難対象者のピークとなった14日、実際に避難した人は最大428世帯739人と約0.06%にとどまった。

 17日午前11時。西彼長与町に避難指示が出ていた。小雨が降る中、町武道館では避難者が高さ1.4メートルの仕切りで四方を囲まれた空間で、危険が過ぎ去るのを待っていた。定員はコロナ禍前の半分の246人だが、避難していたのは2世帯2人だった。
 長与町は今回の大雨で避難所を5カ所開設し、最大12世帯22人が避難した。感染症対策として、昨年から実施している検温や消毒に加え、今年は四方を囲むポリエステル製パーティションを導入。さらに受け付けのスピードを優先して質問項目を簡素化し、アレルギーや車のナンバーなどの記入をやめた。
 町武道館に避難した斉藤郷の相川伸一さん(70)は「長崎大水害で被害に遭って以来、台風や大雨の時は避難する。ワクチンも2回済んで、(避難所はコロナの)対策を取ってあるのでそう心配していない」と話した。
 佐世保市は避難所145カ所のうち38カ所にパーティションを配置。昨年の台風10号では2336世帯4660人が避難したが、今回の大雨では最大90世帯176人だった。同市は「新型コロナウイルス感染者が増加傾向にあることを受け、(知人宅などへの分散避難を含め)人との接触を避けようと考えた人もいるのでは」と認識を示す。
 同市大宮町の70代女性は「(市の避難所は)検温や消毒などの対策はあるが、不特定多数が集まる可能性もあるので」と不安を口にする。女性は大雨特別警報が出た14日は近くの知人宅に身を寄せたが、17日は知人の都合が付かず避難所を訪れた。
 県内17市町は、避難所の開設や混雑情報がリアルタイムで確認できる「バカンマップス」を今年導入した。避難所の定員をコロナ禍前の半分にした上で、長崎市は定員の半分未満を「空いています」、5割以上を「やや混雑」、8割以上を「混雑」と表示した。
 大雨特別警報が長崎など6市町に出て、避難情報で最も危険度が高い「緊急安全確保」が発令されていた14日夕。長崎市内の商店街で市民に避難所に行くかどうかを尋ねると、「崖崩れなどの心配がない」「自宅がハザードマップにかかっていない」「面倒くさい」などと行かない理由ばかりが返ってきた。
 県危機管理課は「難を避けるのが避難。日ごろからハザードマップなどで自宅周辺にどのようなリスクがあるか把握してもらい、最善の安全な場所にいてもらうことが重要。避難情報を確認し、身の安全を第一に行動して」と呼び掛けている。

© 株式会社長崎新聞社