世界の株式市場は「K字型」に、出遅れ日本株の回復ヒントはインドにあり?

足元では、新型コロナウイルスのデルタ型による感染の拡大が世界中で猛威を振るっています。一日あたりの感染者数が過去最多を更新する日本はもちろんのこと、一時期は一定レベルまで感染が落ち着いた欧米諸国でも感染者数が再び増加に転じているケースが散見され、経済・金融市場への影響に予断を許さない状況が続いています。

とはいえ、実際の株式相場を見ると、コロナショックが起きた2020年3月当時とは随分と異なっていることが分かります。つまり、グローバルの株式相場が必ずしも総悲観に陥っているわけではなく、株価のパフォーマンスに明暗が分かれているということです。


世界の株式市場は「K字型」の相場展開

6月中旬を起点とした場合、8月中旬までの相場は、差し詰め「K字型」の相場展開といえるかもしれません。「K字型」という表現は、コロナショック後の経済や企業業績などの回復が二極化する際によく使われた言葉ですが、最近の株価推移においても、市場によって二極化する傾向が読み取れます。

6月16日あたりを起点(K字の縦線)とみなして、およそ2カ月間の株価推移を振り返ると、右斜め上に伸びる直線上では、過去最高値を更新してきている欧米株やインド株などを勝ち組のグループとして分類することができます。一方で、右斜め下に伸びる直線上には日本株や中国株などの出遅れ組が、株価低迷に喘いでいる様子を確認できます。

その背景にあるのは、新型コロナのワクチン接種状況の違いなど、理由は様々だと思いますが、一言でいえば、景気回復への期待に前進が見られるところとそうでないところといった感じでしょうか。緊急事態宣言の適用範囲が広がる日本では、少なからず経済活動が制限され、なかなか投資家のセンチメントが上向いてこないのが実情です。

感染が再び増加に転じている欧米で、極端にセンチメントの悪化が生じていないのは、いわば、「コロナとの共生」に「腹をくくった」からなのかもしれません。もちろん、今後の感染動向次第ではあるものの、経済再開を後退させるようなことにならない限り、「腹をくくった」市場では、ファンダメンタルズの好転を評価する流れは続きそうです。

インド株は日本株にとっての「希望の光」

足元の日本はそうした域には達してはおらず、株式市場が厳しい状況に置かれていることは事実です。しかし、新型コロナのワクチン普及とともに感染が一服すれば、日本にもいずれ経済再開相場は訪れると考えられます。

そういう意味では、見事な相場復活を遂げたインドは、日本にとって希望の光といえるかもしれません。インドでは5月初めに1日の新規感染者数が40万人に達する日もありましたが、今ではそれを2.5万人程度まで抑え込んでいます。

そうした状況が、インド景気回復への期待を高め、足元の株高に結びついていると考えられますが、日本でも感染の広がりをコントロール可能なレベルにまで、再び落とすことができれば、日本株もインド株と同様の道筋を辿ることが期待できると思います。

日本株の出遅れは反騰局面での反発力を高めよう

勝ち組の米国株との比較で、日本株がいかに出遅れ、割安な状態にあるかを測る上で、日本と米国の予想PER(株価収益率、株価÷1株あたり予想利益で計算)格差に注目してみましょう。日本(TOPIXベース)の予想PERが14倍台後半であるのに対して、米国(S&P500ベース)の予想PERは21倍台前半で、その差は6.5ポイントほど開いています。

過去5年間を振り返ってみても、日米の予想PER格差がここまで拡大したことはほとんどなく、米国株との相対比較で、日本株がきわめて割安な状態に甘んじていることがわかります。そのため、今後、日本株に本格的な反騰局面がやってきた時には、極度の出遅れが反発力を高める可能性があるとみています。

<文:チーフグローバルストラテジスト 壁谷洋和>

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