45歳、今後も独身の予定「持病があるけど保険をやめて貯蓄に回したほうがいい?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳・会社員の女性。持病があるけれど、保険をやめて貯蓄に回すべきか迷っているという相談者。現在は独身で、結婚の予定はないそうです。FPの鈴木さや子氏がお答えします。

脳の難病があり、いつ倒れるかわからないのですが、保険をやめようか迷っています。

正社員として勤務していますが、持ち家はなく、結婚の予定もありません。このまま保険に入っておくべきか、貯蓄に回したほうがいいのか悩んでいます。

保険は2000年に入った定期保険で、死亡・高度障害で2,000万円、傷害特約100万円、入院特約120日、日額5,000円、現在の払戻金は383万円です。

よろしくおねがいします。

【相談者プロフィール】

・女性、45歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸(東京都)

・毎月の世帯の手取り金額:30万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:120万円

・毎月の世帯の支出の目安:22万円

・毎月の貯蓄額:7万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,006万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:60万円

・現在の投資総額:440万円

・現在の負債総額:0円


鈴木:毎月、コツコツ貯金や投資を続けられていて、ご相談者の堅実なお人柄が伝わってきます。加入されている医療保障付き定期保険をやめてよいものか、悩んでいらっしゃるのですね。たしかに保険をやめれば、貯蓄スピードはアップします。今の状況や今後のライフプランを考慮した場合、ご相談者様が保険をやめて良いものか、考え方をお伝えします。

死亡保険は「亡くなったあと家族にお金を遺したい場合」に有効

定期保険は、亡くなったり所定の高度障害状態となった際に、遺族または本人に一定のお金を遺し、葬儀や生活にかかるお金に充ててもらう目的で加入する死亡保険です。よって、もし「自分が亡くなったあと、お金を遺す必要はない」または、「遺したいお金はすでに貯蓄で十分準備できる」と思われる場合は、死亡保障は不要と言えます。

ちなみに、所定の高度障害状態とは、商品や加入時期によっても異なりますが、一般的に、「両眼の視力を全く永久に失ったもの」や「言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの」「中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの」等が該当します。どのような状態が高度障害状態にあたり、保険金を受け取れるのか、商品の約款に書いてありますので、一度確認し、ご自身にとって残しておきたい保障か考えると良いでしょう。

解約すると、医療保障がなくなることに注意

加入されている定期保険には、医療保障の特約が付いているため、もし解約すると医療保障も消滅します。難病を抱えているとのことで、これまでも入院給付を受けたこともあるかも知れません。あまり使う機会がなかったなど、必要性を感じなければ、解約でも構わないと思います。

医療保障は、入院や手術をした際の自己負担を補うものです。健康保険の高額療養費制度を使えば、どんなに医療費がかかる月でも、8~9万円などの自己負担で済むため、貯蓄から出せる範囲と思える人には不要です。また、指定難病と診断され、特定医療費の資格認定を受けられた場合は、月々の自己負担は2万円など、かなり抑えられます。

ご自身の病気のこと、かかる医療費、かかるかも知れない医療費を考えて、もし少しでも「貯蓄を使って医療費を払うのは不安」と考えるのであれば、必要最低限の医療保障を備えておくと安心です。

死亡保障を残したい場合は「保険金減額」か「払い済み」

現在、死亡保険金2,000万円の定期保険に加入していますが、保険金を減額することによって、支払う保険料を下げることが可能です。保険金減額に伴って、入院日額など特約の内容も減る場合がありますので、一度保険会社に見積もりを取ると良いでしょう。減額は一部解約にあたるため、減額した部分に対応する解約返戻金も受け取れます。

また、解約返戻金のある保険は、保険契約を残したまま、今後の保険料の払込をやめる「払い済み」が使えることがあります。現在の解約返戻金をもとに、同じ保険期間の定期保険に変更するため、2000万円の保険金額は減額されます。また、「払い済み」と同時に、特約は消滅することに注意が必要です。ちなみに、解約返戻金は受け取れません。

死亡保障は不要。医療保障が欲しいなら「引受基準緩和型医療保険」を

死亡保障が不要なら、定期保険は解約が良いですが、医療保障は同じくらい備えておきたいのなら、持病をお持ちの方も入れる可能性がある「引受基準緩和型医療保険」も選択肢となるでしょう。

引受基準緩和型医療保険は、医師の診査が不要で、3つなど、いくつかの告知項目に該当していなければ加入できる保険です。商品によっても告知項目や数は異なりますが、たとえば「3カ月以内に医師から入院・手術・検査のいずれかをすすめられたか?」「過去2年以内に、入院したり手術をうけたか?」「過去5年以内に、がんや肝硬変、統合失調症、認知症、アルコール依存症で医師の診察・検査・治療・投薬のいずれかをうけたことがあるか?」といった内容です。また、加入前にかかっていた病気を原因とする入院や手術に対しても、責任開始日より前に入院や手術をしていないなど所定の条件(商品によって異なる)を満たせば、保障を受けられるのも特徴です。

加入しやすい分、通常の医療保険より少し保険料は高くなりますが、ある保険会社の商品では、「45歳女性/入院日額5,000円/終身払」で月3,236円でした。

昨今の医療保険における入院給付の主流は、入院1日目(日帰り含む)から保障されるタイプ。もし加入されている保険の入院給付が、古いタイプによくある入院5日目からしか入院給付金がもらえないタイプであれば、同じ入院給付日額5,000円でも保障は広がりますね。

もし医療保険への新規加入を検討する際には、まずは保険料が割安の一般の医療保険に入れないか問い合わせることをおすすめします。状況によっては、既往症以外について保障されるといった契約で加入できることもあるからです。無理だった場合に、引受基準緩和型医療保険を検討されると良いでしょう。

これを機会に老後資産のプランニングを

現在、年144万円の貯蓄ができており、今後も変わらなければ、60歳時の資産は3,606万円となります(投資については440万円として計算)。60歳にて退職、再雇用なし、退職金なしと仮定し、60歳以降の資産寿命を考えてみました。

【60歳以降の資産寿命】
(1)65歳時点に残る資産
60歳時の資産-年間生活費×5年

(2)資産寿命
(1)÷(年間生活費-年金額+予備費)
※予備費とは、医療介護費や引っ越し代など

上記に当てはめて計算してみましょう。

(1)65歳時点に残る資産
現在、保険料以外の年間支出は300万円。年金をもらい始めるまでの5年間、同じ支出となると、65歳時点での資産は1,500万円減って2,106万円となります。

(2)資産寿命
年金額が仮に月15万円、予備費を50万円とした場合、下記となります。
2,106万円÷(300万円-180万円+50万円)≒12年

もし65歳以降の生活費を年300万円ではなく250万円とした場合は、
2,106万円÷(250万円-180万円+50万円)≒18年
と6年間ほど延びます。もし保険を今解約し、解約返戻金と浮いた保険料をすべて貯蓄にまわした場合は、さらに6年間ほど延びて24年となります。

ぜひ、保険の存続を考えるこの機会に、ねんきん定期便やねんきんネットを使い、正確な年金予定額をチェックするなど、老後プランニングに取り組んでみてください。そして老後の生活費や医療費を予想して、資産寿命を出してみましょう。保険を解約すれば、資産寿命は延びますが、少しでも医療費への不安が残る場合は、最低限の医療保障のみ検討するのも良いと思いますよ。

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