諫早・轟峡崩壊事故 市が管理瑕疵責任を認める 遺族と示談に向け交渉へ

 昨年7月、親子3人が死傷した長崎県諫早市高来町の轟峡のり面崩壊事故で、市は23日、崩壊した石積みと擁壁について市に管理瑕疵(かし)責任があると判断し、遺族に謝罪した上で賠償の示談に向けた交渉を始めたことを明らかにした。市議会全員協議会で報告した。同事故で、市が公の場で責任を認めたのは初めて。
 昨年7月25日の事故では、県道に面した飲食店そばから轟の滝へ下りる遊歩道にいた親子が巻き込まれ、母子2人が死亡、子ども1人が負傷した。市が設置した再発防止検討委員会(委員長・蒋宇静(ジャンイジン)長崎大大学院教授)は、飲食店直下の石積みとコンクリート擁壁が最初に崩壊したと分析。昨年7月豪雨で背面にまで地下水の水位が上昇し、石積みと擁壁を滑り動かす誘因となったほか、長い年月で擁壁基礎地盤の支持力が低下したことなど「複合要因で突発的に発生した」と結論付けた。
 市によると、検討委が3月に提出した提言書の内容を踏まえ、顧問弁護士らと協議し、市に管理瑕疵責任があるとの結論に至った。事故1年を前に7月、大久保潔重市長が遺族と面会し、謝罪したという。市は取材に「石積みと擁壁はかろうじて現状を維持していた。(擁壁の表面には一昨年6月、縦約2メートルの)亀裂も見つかっており、それらを総合的に判断した。十分な安全性があったとは言い切れない。示談に向け、真摯(しんし)に対応していきたい」としている。
 市は再発防止に向け、轟峡への立ち入り規制基準や安全管理マニュアルを作成中。再開には復旧工事のほか、こうした安全管理体制の確立が必要で、現時点で見通しは立っていない。

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