川棚の「小串トマト」多彩な料理に 『いろはにとまと』プロジェクト始動 飲食店10店がオリジナルメニュー

「お食事処 音ケ瀬」が提供する「鉄板オムライス」

 長崎県東彼川棚町の特産品「小串トマト」を多くの人々に味わってもらおうと、同町などの飲食店10店舗が、オリジナルメニューを展開する「いろはにとまと」プロジェクトに乗り出した。各店が和・洋・中華料理、デザート、パンなど多彩なジャンルでレシピを考案。ビジュアルにもこだわった情報発信で「トマトの町・川棚」を盛り上げる。
 仕掛け人は、佐世保市重尾町の菓子店「草加家」の高木龍男社長(58)。新商品の宣伝映像制作のため、知人のデザイナー、深川圭さん(30)と川棚町を訪ねた際、同町観光協会から新商品の開発を打診された。同町の名物を調べ、すでにブランド力がある小串トマトに着目した。
 小串トマトは果物並みの糖度が特長で、同町を代表する特産品。新商品開発に向け、高木社長が町内の複数の飲食店に聞き取ると、多くの店が「食材に使いたい」と考えながらも、単価が高く、流通量が少ないため「なかなか手を出せない」という現状があった。
 これを受け高木社長は、比較的安価で手に入る「B品」を、年間を通して料理に使えるように加工することを思い付いた。JAながさき県央小串トマト組合の生産者に掛け合って約1トンの「B品」を仕入れ、濃厚なピューレを開発。町内の飲食店に持ち込むと、多くの店が「使いたい」と手を挙げた。
 ピューレの供給量が限られているため、町内を中心に10店舗からプロジェクトをスタート。6月以降、各店が順次オリジナルメニューを提供している。小串郷の温浴施設「しおさいの湯」のレストラン「お食事処 音ケ瀬」は鉄板オムライス、百津郷の定食店「味処 まま家」はつけ麺、栄町の中華料理店「優」は天津飯、三越郷のカフェ「BUCO cafe」はデザートなど、それぞれが趣向を凝らしたメニューを考案。JAながさき県央の直売所「グリーン東彼新鮮市場」では、ピューレ単体でも販売している。

「味処 まま家」が提供する「小串トマトのつけ麺」

 7月末には生産者を招いた試食会も開いた。小串トマト組合の一瀬薫組合長(62)は「以前にも小串トマトを使った商品開発の動きがあったが、軌道に乗らなかった。今回はさまざまな飲食店が参加して頼もしい」と期待を寄せる。
 プロジェクト全体のデザインや情報発信は深川さんが担当。各店の料理を撮影したり、店に掲示する「トマれるSPOT」のポップを作成したりして、プロジェクトのインスタグラムで投稿している。小串郷出身で県内を拠点に活動するモデル、赤司真菜さん(27)を起用し、さまざまな媒体で発信するという。

「いろはにとまと」のポップを手に、プロジェクトをPRする赤司さん=川棚町

 今後はオリジナルキャラクターの考案やイベントの開催も構想している。プロジェクトの代表で、「BUCO cafe」の松隈靖之さん(51)は「小串トマトの生産が始まり供給が安定すれば、さらに多くの飲食店に参加してもらい、『どこでも食べられる町』にまで広げたい」と話している。

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