「九十九島が大好き」 大型遊覧船の”ママ船長”がデビュー 平嶋心さん

船長デビューを果たした平嶋さん=佐世保市内

 九十九島パールシーリゾート(長崎県佐世保市)の大型遊覧船の船長として、平嶋心さん(29)がデビューした。3歳の娘を持つシングルマザーでもある平嶋さんは、仕事と子育ての両立に奮闘しながら船長にチャレンジ。「子どものおかげで頑張れた。大好きな九十九島を毎日見ることができて幸せ」と笑顔を見せる。
 同市出身。小さい頃から九十九島や鹿子前地区が好きで「パールシーで働きたい」と思っていた。その念願がかない2015年にさせぼパール・シーに入社した。
 遊覧船の売店で業務した際、船長が働く姿を見て、「自分もなりたい」との思いを抱いた。船長への希望を伝えていたこともあり、19年に遊覧船事業部に配属。大型遊覧船の見習い船員(甲板員)として出入港の際のロープ作業や船内清掃、船の整備などの業務に当たった。
 当時、子どもは1歳。手がかかる時期で、家に帰っても自分の時間はほとんど無く、病気になれば仕事を休まなければならなかった。慣れない子育てと新しい業務との格闘。体力的にも精神的にも辛い時期があったが、それでも心の支えとなり励まされたのは、「子どもの存在だった」と振り返る。
 甲板員として約2年間の実務経験を積み、今年2月、200トン未満の船舶の船長になれる国家資格「6級海技士」を取得。先輩船長の指導の下、半年間の操船訓練を受け“お墨付き”をもらった。7月16日、晴れて同社4人目となる女性船長としてデビューを果たした。
 平嶋さんによると、島が点在し、リアス海岸の九十九島は「操船が難しい」海域だ。水深が深い場所と浅い場所が複雑に混在し、大型船で通れる場所が限られている。入港の際は風を読まないと、岸壁に衝突する危険もあるという。
 現在は1日数回かじを握る日々。子を持つ母として、子ども連れの母親の気持ちをくんだ細やかな声掛けを心掛けている。「安心して乗船していただけるようもっと操船技術を磨き、親しみやすい船長を目指したい」と目を輝かせた。


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