自然が育む「子どもの生きる力」 考え工夫する過程 大切に 諫早青少年自然の家スタッフ 和泉志帆さん

自然体験を通して、子どもたちの生きる力を育もうと奮闘する和泉さん=諫早青少年自然の家

 新型コロナウイルス禍でも気軽に楽しめるレジャーとしてキャンプが一大ブームになっている。こうした自然体験を通して、子どもたちの生きる力を育もうと奮闘する女性が、長崎県諫早市の国立諫早青少年自然の家にいる。

 野外教育でよく使われるキャンプネームは「いずみん」。ほがらかな笑顔が印象的な和泉志帆さん(25)は自然体験活動指導者(NEAL)リーダーの認定資格を持っている。普段は電話応対などの窓口業務を担当。利用者に「また来たい」と思ってもらえるように明るく振る舞っている。
 奈良県出身。子どもに関わる仕事に就くのが夢だった。教職員を目指していた学生時代、地元の自然の家でボランティアスタッフとして経験を積んだ。見違えるように成長していく子どもたちの様子にやりがいを感じた。
 諫早青少年自然の家では登山や沢登り、野外炊飯が人気のプログラム。けがや事故がないよう、安全指導に力を入れる。その上で、正解をただ教えるのではなく、子どもが自ら考えたくなるような問い掛けにこだわる。
 例えば、火おこし。子どもは、空気がなければ燃えないという知識はあっても、まきのくべ方が分からない。「なぜだろう」と考えて工夫する過程を大切にすることで「将来、課題と向き合い解決していく力を身に付ける」ことを和泉さんは期待する。
 だが子どもとの接し方にマニュアルはない。ある男児がふざけてみそ汁をこぼしたのに謝らず、和泉さんが叱ると、部屋から出てこないほどふさぎ込んだ。和泉さんは「言い方がきつかったか」と後悔しつつ「間違ってはいない」と自分に言い聞かせた。体験の最終日、男児のアンケートには小さく「ごめんね」の文字があった。「思いは伝わったんだなと、うれしかった」と振り返る。
 「ここに来て新しい何かを見つけ、今後の挑戦のきっかけにしてもらえれば」。諫早の自然の中で子どもたちと一緒に自分も、課題を解決する力が付いていくのを実感している。

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