モータースポーツを始める第一歩はヘルメットから。F1で最もシェアを誇るベルのモデルを編集部員が試着!

 モータースポーツを観戦するだけではなく“自分でもやってみたい”、そう誰しも一度は憧れるもの。四輪レースを本格的に始めるとなるといろいろ大変だが、レンタルカートや、普段乗っている自家用車でも参加できるお手軽なサーキット走行会であればライセンスも不要で、比較的手軽に参加することが可能だ。

 レンタルカート場の多くは、手ぶらで行ってもグローブやヘルメットのレンタルサービスがあり、気軽に、手軽に走行を楽しめるケースが多い。しかし、“モータースポーツマニア”としては、まずレーシングギアにこだわってみるというのもアリではないだろうか? 本格的にJAF公認四輪レースへの参戦を目指すのであれば、レーシングスーツから一式揃えるのもいいが、レンタルカートや、走行会に出るのであれば、まずはヘルメットにこだわり、一点豪華主義で本格的な四輪用ヘルメットでレーサー気分を盛り上げつつ次のステップに進む、というのをおすすめしたい。

 実は、カートのスポーツ走行や走行会の多くはヘルメットの規格さえクリアしていれば二輪用でも参加可能だったりする。しかし四輪用の場合には、内装に難燃繊維が使われているだけでなく、運転姿勢と必要な視野が違うため二輪用に比べて開口部が狭い。そのため、カートや走行会で使うにもやはり四輪用のヘルメットの方が似合うはず。

 というわけで、今回はモータースポーツをやってみたい、という思いが強まって実際にヘルメット購入を検討しているautosport web編集部員が、2021年シーズンのF1においてもっとも使用者が多いベル(BELL)の、四輪用モデルの日本輸入代理店であるワイエフシーに足を運び、各ヘルメットのライナップとその違いなどを聞いた。

■F1で最大シェアを誇るベル・ヘルメットのラインアップ

 ベルの四輪レース用ヘルメットは28種類がラインアップされているが、大きく5つのシリーズに分類されている。今回はラリー向けの『RALLY Series』を除く4つのシリーズから、23モデルをご紹介しよう。

■SPORT Series

 エントリーモデルの『SPORT Series』では、ドライビングスタイルに合わせた5種類がラインアップされている。フォーミュラカーやカーターに最適な空力性能を誇る『GP3 SPORT』、マットブラック仕様の『GP3 SPORT Matt Black』、クローズドカーやオープンコックピットの幅広いマシンに対応する多機能モデルの『GT5 SPORT』、そしてクラシックスタイルのオープンフェイスヘルメット『MAG-1』と『MAG』だ。いずれのモデルも手に入れやすい価格だが、FIA8859-2015規格を合格しており安全性も高い。これらモータースポーツを始めるにはうってつけのシリーズだ。

ベル『GT5 SPORT』希望小売価77,000円(消費税込)
ベル『GP3 SPORT』希望小売価84,700円(消費税込)
ベル『GP3 SPORT Matt Black』希望小売価86,900円(消費税込)
ベル『MAG-1』希望小売価66,000円(消費税込)
ベル『MAG』希望小売価49,500円(消費税込)

■PRO Series

『PRO Series』ではHP7のデザインをベースに、軽量なカーボンファイバーグラス製コンポジットシェルを採用した『RS7 PRO WHITE』、HP6と同様のモダンでアグレッシブなデザインを採用した『GT6 PRO』のカラーバリエーションに加え、軽量なカーボングラス複合材のシェル、調整可能なピーク、新しい調整可能な一体型サンスクリーンを備えるオープンフェイスの『MAG-10 PRO』の全7種類がラインアップされている。『SPORT Series』よりも軽量化を実現しており、プロフェッショナル用途でも快適な装着感を実現したトッププロドライバーに向けのシリーズだ。

ベル『RS7 PRO WHITE』希望小売価格118,800円(消費税込)
ベル『RS7 PRO MATT BLACK』希望小売価118,800円(消費税込)
ベル『RS7 PRO STAMINA GREY』希望小売価140,800 円(消費税込)
ベル『RS7 PRO STAMINA RED』希望小売価140,800円(消費税込)
ベル『GT6 PRO WHITE』希望小売価121,000円(消費税込)
ベル『GT6 PRO MATTE BLACK』希望小売価121,000円(消費税込)
ベル『MAG-10 PRO』希望小売価93,500円(消費税込)

■CARBON Series

『CARBON Series』はその名の通りシェルにフルカーボンを採用したシリーズだ。『RS7 PRO』、『GP3 SPORT』、『MAG-10 PRO』のカーボン仕様に加え、クローズドカー向けの『GT6 CARBON』、同モデルに無線通信キットとハイドレーションシステムを統合した『GT6 RD CARBON』、そして北米のフォーミュラ、カート、ダートトラックなど幅広いレースでその汎用性の高さを発揮している『GTX3 CARBON』という全6種類がラインアップされている。カーボン製シェルにより軽量化を実現した上で、国際自動車連盟(FIA)が求める安全基準SNELL SA2020、FIA8859-2015基準をクリアした高剛性を兼ね備えたシリーズだ。

ベル『RS7 CARBON』希望小売価格228,800円(消費税込)
ベル『GT6 CARBON』希望小売価214,500円(消費税込)。無線通信キットとハイドレーションシステムを統合した『GT6 RD CARBON』は希望小売価258,500円(消費税込)となる
ベル『MAG-10 CARBON』希望小売価181,500円(消費税込)
ベル『GTX3 CARBON』希望小売価格176,000円(消費税込)
ベル『GP3 CARBON』希望小売価格170,500円(消費税込)

■ADVANCED Series

 最後に紹介するのが、ベルの四輪用ハイエンドシリーズとなる『ADVANCED Series』だ。FIAがレーシングヘルメットの世界最高の安全基準として設定する最新のFIA8860-2018基準をクリアする5モデルがラインアップされている。

 F1ドライバーやチームの意見を反映し、熟成されたハイエンドモデルの『HP77』と『HP7 EVO3』は、オートクレーブ・カーボンシェルと衝撃吸収ポリスチレン材を惜しみなく使用し、他の商品と比較し耐衝撃性能が40%向上。さらに59cmのシェルで重量は1290g(+/ー5%)と驚異的な軽さを誇り、自動車レース用ヘルメットとして世界で最も軽く安全なヘルメットであるといえる。

 その価格からもわかる通り、本格的なモータースポーツ用途を前提としているまさに“プロの仕事道具”だ。なお、2021年シーズンのF1ではルイス・ハミルトン(メルセデス)やフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)、キミ・ライコネン(アルファロメオ)ら11名が『HP77』を愛用している。

ベル『HP77』希望小売価格748,000円(消費税込)
ベル『HP7 EVO3』希望小売価格539,000円(消費税込)
ベル『HP7 EVO3 Duckbill付』希望小売価格539,000円(消費税込)
ベル『HP6』希望小売価格341,000円(消費税込)
ベル『HP10』希望小売価格363,000円(消費税込)
ベルのレーシングヘルメットを愛用するニキータ・マゼピン(ハース)とフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)

■試着して感じたヘルメットの“軽さ”の大きな価値

 それでは、最近FIA-F4マシンのステアリングを握ったことで、モータースポーツを見るだけではなく、自ら走りたいという欲求が高まっているautosport web編集部員がいくつかのモデルを試着させてもらったので、その装着感をお届けする。

 まず、最初にエントリーモデルの『GP3 SPORT』を被った。エントリーモデルといえど最新モデルだけに特段重いとは感じず、カートや走行会であればこれでいいのでは?と感じた。続いて、同じデザインのフルカーボン仕様『GP3 CARBON』を装着した。同じデザインにもかかわらず、手に取った時点で重量の違いを実感できた。被ってみると首にかかる力の少なさからカーボン製の軽さが際立ち、当たり前だが、素材が違うだけでここまで変わるものかと感じた。

 最後に、最新ハイエンドモデルである『HP77』を被る。ぱっと見は『GP3 CARBON』と同じカーボンであるが、オートクレーブ・カーボンシェルと衝撃吸収ポリスチレン材を使用していることもあり明らかにこちらの方が軽い。頭を振り回しても、首や上半身にかかる負荷は他のモデルに比べて明らかに少ない。この違いはレーシングスピードを走るコース上では大きな差となって現れるだろう。

『HP77』を手にしてから改めて『GP3 SPORT』を手にすると、その重さの違いの大きさに驚かされる。プロフェッショナルドライバー向けの製品である『HP77』の軽さは1秒、いや0.001秒を争う世界を競うために求められるものなのだということを強く感じることができた。ヘルメットの存在は重要だが、装着時にはその存在感を忘れさせることが最高峰モデルに与えられた使命なのかもしれない。

 また、今回試着した3モデルに共通して“インナー素材が柔らかめ”、そして“口元に余裕がある”と感じた。インナーの柔らかさは装着感に直結するだけに、快適性を高めるのに役立っているのではないだろうか。

ベルが展開する四輪用レーシングヘルメット

■快適なドライビングには適切なサイズ選びが必須

 さて、ヘルメット選びで各モデルの特徴を理解した次のステップは、自分の頭にフィットするサイズ選びだろう。これはメジャーがあれば一人でも測定できる。ベルの場合、測り方のポイントは眉の上1~2cmの位置からメジャーを鉢巻状に伸ばして測定すること。何度か測定し、一番大きいサイズを目安にヘルメットサイズの互換表から自分にあったサイズ選択しよう。

 最近は通販で購入するユーザーも増えているということだが、エントリーモデルでも8万円近くするだけに、サイズ選びは慎重にいきたいところだ。そのため、ベルの四輪モデル取扱店舗に足を運び、サイズ計測、試着を行うことも間違いがなく、確実性があるためおすすめしたい。

 なお、ベルの四輪モデルの日本輸入代理店であるワイエフシーは横浜ゴムのグループ会社であるため、ベルの製品は全国のグランドスラム、タイヤガーデン等のヨコハマタイヤグループ店舗でも取り寄せることができる。試着してみたいけど、近くにレーシングギアの専門店がないという場合には近くのグランドスラム、タイヤガーデンで相談してみるのもアリだろう。

 レーシングギアにはドライバーの身体を守るという大きな役割があるが、中でもヘルメットというものはドライビングに大きく影響するアイテムだ。一見同じに見えても、装着時の快適性、視認性、そして重量などにそれぞれ特徴を持っており、スポーツ走行を楽しむ上ではマシンのコンディションと同じく、状況を左右する存在だといえる。

 今回編集部員は各モデルを装着したことで、費用面も含めて初のマイ・ヘルメット選択の方向性が定まった! ぜひ、ヘルメット選びの参考にしてほしい。そして自分にピッタリのヘルメットとともに、モータースポーツを全身で、全力で楽しもうではないか!

2021年シーズンは11名が愛用するベルのレーシングヘルメット『HP77』

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