SKE48初選抜の青海ひな乃 リハビリ続ける父の笑顔と涙が与えた「チカラ」

初選抜入りを果たした青海ひな乃

アイドルグループ「SKE48」の28枚目シングル「あの頃の君を見つけた」が9月1日に発売される。この曲で初めて選抜メンバーに選ばれたのが9期生の青海ひな乃(20)だ。「すごくさわやかで、青春な曲です。初恋を思い出すような誰もが自分のことにあてはめられる曲だと思います」と新曲をアピールした。

初選抜入りの吉報が届いたのは5月下旬。両親、2人の兄と家族5人で夕食を食べていた時に所属事務所からのメールで知った。「よかったね」「おめでとう」。大盛り上がりの青海家の食卓だったが、何よりも父の笑顔がうれしかった。

「私がSKEに入ったきっかけは父に恩返しをするためだったんです」

青海が高校3年生だった2018年5月、父親が突然倒れた。脳梗塞だった。奇跡的に一命はとりとめたものの約2か月の入院生活。退院後も自宅でリハビリを続ける父に何か自分ができることはないか、考える日々が続いた。そんなときに知ったのが地元・名古屋で活動するSKE48の9期生オーディション。

「SKEに入って歌って踊る姿を見たらお父さん喜ぶんじゃないか」

兄の言葉に背中を押され応募したオーディションに合格し、2018年12月に青海はSKE48の一員となった。

「私はアイドルのことを全く知らなくて正直、アイドルってドロドロしてるんだろうな、ヤバいんだろうなと思ってたんですよ。女だけの世界というものを経験したことがなかったので、怖くて…」

だが、予想とは全く違ってそこは熱くてアットホームな世界だった。同期のメンバーと共にレッスンに励む毎日。初舞台に向けてみんなで話し合い、励まし合った。先輩も皆、温かかった。18年12月31日にSKE48劇場で行われた9期生のお披露目ステージではこれまでの人生では味わったことのない感動を覚えたという。

「初めて知らない人たちの前で歌って踊ったんですけど拍手や歓声、サイリウムの輝きがすごくて。アイドルってこんなに楽しいんだって思いました」

ステージに立つ喜びを知った瞬間だった。

アイドルとして活動することは父への恩返しにもつながった。今もリハビリを続ける父はまだ右手を動かすことができない。それでも自分が出演するSKE48劇場での公演をネット配信でいつも見てくれる。

「父はアイドルに全く興味なかったんですけど『それそれそれそれ! エス! ケー! イー! 48!』っていうコールを覚えてくれて今ではSKEの大ファンなんです」

2019年7月に発売されたSKEのシングル「FRUSTRATION」で青海はカップリング曲を歌う9人組ユニット「カミングフレーバー(カミフレ)」のメンバーに選ばれ、CDの裏ジャケットにはカミフレメンバーの写真が使われた。娘の姿が写っているCDを見て父親は涙をこぼしたという。

「自分がアイドルをやっている意味があるんだって思いました。私もすごくうれしかったです」

父のうれし涙がさらに力を与えてくれた。

父親に恩返しをしたいという思いで始めたアイドル活動だが、ステージで歌って踊ることは今、青海にとって最高の喜びとなっている。そして新たな目標もできた。

「ファンの皆さんみんなが見つけてくれたから今の私がある。皆さんの声援やコール、応援があるから限界を超えて頑張れちゃうんです。お父さんのためにという思いでやってきたけどファンの方にももっと恩返しをしていきたい。そして大好きなSKE48をもっともっと多くの人たちに知ってもらえるように頑張りたいです」

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