国軍弾圧、新型コロナ… ミャンマーの惨状知って 母国のために募金活動

困窮する国民のために募金を呼び掛ける女性=佐世保市島瀬町

 国軍がクーデターにより全権を掌握したミャンマー。国軍による弾圧に加え、新型コロナウイルス感染症も猛威をふるい、国内の惨状に拍車がかかっている。そんな母国のために何かできないか-。長崎県佐世保市在住のミャンマー人の女性(37)は「ミャンマーの現状を市民にも知ってほしい」と、困窮する国民を支援するための募金を市内で呼び掛けている。
 8月10日午後1時半、同市島瀬町の島瀬公園前。「ミャンマーのために1円でも構いませんので、よろしくお願いします」。女性はそう言って、道行く人たちに何度も深々と頭を下げていた。
 女性は、ミャンマーの南部出身で7人きょうだいの四女。弁護士を目指し、ミャンマーの大学で法律を学んだが、卒業後は家計を支えるため、マレーシアの中華レストランで働いた。
 そうした生活が5年ほど続いたころ、日本に興味を持ち、1年間日本語を猛勉強。2017年に来日し、県内の大学に進学した。卒業後は、通訳やホテルの受け付けなどで働こうと思っていたが、新型コロナの影響で希望した就職先は見つからず、介護関係のアルバイトをして生活している。
 今年2月1日、ミャンマーでクーデターが発生した。仕事が終わった後、会員制交流サイト(SNS)で友人らが発信しているのを見て、クーデターが起きたことを知った。怒りをあらわにする友人たち。何が起きたのか信じられなかった。ミャンマーにいる家族のことが心配で、両親と暮らす長姉と連絡をとった。家族は無事だったが、長姉はこう話した。「私はデモに参加する」
 同国中心部に住む弟もデモに加わった。女性も、2月に福岡県であった抗議デモに参加。行動せずにはいられなかった。弟は4月ごろ逮捕されたが、釈放され、今は両親と暮らしている。
 ミャンマーでは、政治の混迷に加え、新型コロナも暗い影を落としている。感染が拡大し、家族は働くことさえできないという。女性はタイに住む3番目の姉と協力し、家族らに送金しているが、母国の状況はなかなか改善されない。
 「より多くの人が関われば、少しは国が良くなるかもしれない」。思い付いたのが募金活動だった。5月に初めて街頭に立ち、知人のミャンマー人も手伝ってくれた。6月にも2回実施。寄付金は、大阪府在住のミャンマー人を通して、現地の生活困窮者を支援する団体などに送金している。「今、多くの人が捕まったり、殺されたりしている。軍が行っていることは、人権侵害。一日でも早く、平和な生活を取り戻さなければ」。女性はそう訴える。
 7月、ミャンマーにいる親戚2人が新型コロナで亡くなった。国が混乱し、ワクチン接種も進まない。デモに参加するため、仕事を辞めた人もいる。母国から届くのはつらい知らせばかりだ。
 「自分の家族だけではなく、子どもたちの将来のためにも今の状況は変えないといけない。わたしも日本から闘う。ミャンマーの現状を佐世保の人にも知ってほしい」。募金活動はこれからも続けるつもりだ。母国の混乱が落ち着くまで。


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