「六月の牛」など36点  被爆画家・池野清回顧展 県美術館

「六月の牛」(右)などが並んだ展示会場=長崎市、県美術館

 長崎原爆で被爆し47歳の若さで亡くなった長崎市の洋画家、池野清(1913~60年)の回顧展が、長崎市出島町の県美術館で開かれている。長崎新聞の報道をきっかけに6月、同市で見つかった油彩画「六月の牛」など36点を展示している。11月7日まで。
 池野は45年8月の長崎原爆で救援のため爆心地付近に入り被爆。戦後は中央の美術公募展「独立展」への出品を続け、古里の美術振興にも力を尽くすが、原爆の後遺障害に苦しみ60年にこの世を去った。友人で同市出身の作家、佐多稲子は池野の生涯をモデルに長編「樹影」(72年)を発表、野間文芸賞を受賞した。
 回顧展は長崎ゆかりの作家に焦点を当てる企画の一環。被爆75年の昨年夏に予定していたが、新型コロナウイルス禍で1年間延期された。
 遺作で代表作として知られる「木立」「樹骨」(いずれも同館所蔵)をはじめ油彩24点、ドローイング8点、書籍など4点を展示。その生涯や画業は不明な点も多いが、今回は2月に長崎大学病院(同市)で見つかった「足を洗う少年」や「六月の牛」、個人蔵の非公開作など半数超の約20点が同館として初公開となった。
 同館の福満葉子学芸専門監は「池野の画業を知ることは長崎画壇の当時を明らかにすることにもつながる。展覧会を機に新たな作品や情報が出てくることも期待したい」と話した。

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