金メダリスト・入江聖奈が井岡一翔V3を〝解説〟「見栄えのいいパンチ」で見た目以上の完勝

井岡V3戦を〝解説〟してくれた入江聖奈(代表撮影)

金メダリストの見解は? WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ(1日、東京・大田区総合体育館)で、王者の井岡一翔(32=志成)が同級2位フランシスコ・ロドリゲス・ジュニア(28=メキシコ)を判定3―0で下しV3に成功。タトゥー問題、ドーピング疑惑騒動を経ての注目の一戦は、王者が劣勢に見える場面もあったが…。勝敗を分けた決め手について、東京五輪ボクシング女子フェザー級で日本女子初の金メダルを獲得した入江聖奈(20=日体大)が本紙に〝解説〟してくれた。

一翔にとって再出発の位置づけとなる重要な一戦となった。昨年大みそかの田中恒成(畑中)とのV2戦で試合中のタトゥー露出が議論となり、さらにドーピング検査で禁止薬物の陽性反応を示したとされ騒動になったからだ。

調査の結果、日本ボクシングコミッション(JBC)の不手際も明らかとなり潔白は証明されたが、渦中の男は気合を示すかのようにコーンロウに髪を編み込み、国内の世界戦では初の無観客開催となったリングに立った。

序盤から積極的に前に出てくるロドリゲスに対し、2ラウンド(R)に強烈なボディーを叩き込むなど応戦。徐々にペースを奪い返していく。息を吹き返した挑戦者は9Rから猛攻を仕掛けてきたが、11Rに入ると攻め疲れたところに有効打を積み重ねて再び優勢に。最終12Rでも的確なパンチを浴びせ、フルマークの判定勝利を収めた。

試合後は「今日は全然自分の持っているものを出せなかった」と反省しつつも「経験で勝てた試合」と安堵の表情を浮かべた。今後は年内の統一戦実現を目指し、狙いをIBF同級王者ヘルウィン・アンカハス(フィリピン)に絞っている。「そこでとりあえず取りにいきたいと思ってジムに自分の意思は伝えているので。年内、交渉次第ですけど僕はそこ1本を狙って」と語った。

この注目の一戦を中継したTBSにゲスト出演したのが入江だ。SNS上でも「的確な解説」「分かりやすい」と好評価で、本紙は試合後に改めて分析してもらった。

まず「ロドリゲス・ジュニアさんのフィジカルが強い」と絶賛。「パンチが日本人のきれいな打ち方と違って変則的なタイミング。右ストレートも腰をひねるというより、ちょっと押し出すような感じなのでタイミングが取りづらいと思いますね」。さらに左フックに関して「井岡選手はもらっていましたね。見た目以上によけにくい印象でした」と舌を巻いた。

では、なぜ井岡に軍配が上がったのか? 入江は〝審判目線〟に立ってこう話す。

「井岡選手はミドルレンジがメチャクチャ強いですが、なんと言ってもロドリゲス・ジュニアさんよりパンチの見栄えがいいんです。理想的な腰の回転と重心移動でパーン!って打ち込む。この見栄えの良さで相手より一枚上だったと思います」

入江自身は試合中、審判の目を強く意識するという。五輪で有名になったお辞儀も「審判からの印象を良くするため」と正直に話しており、パンチに関しても「プロとは状況が違いますが」と前置きした上で「極端に言うとパンチが効いてなくてもジャッジに1ポイントを押させればいいので」と〝見られ方〟が重要だと話す。

この勝因を踏まえた上で「接近戦でもしっかりきれいなパンチを打てるのは本当に強い。また、絶対に打ち終わりに何かしら打ちにいく。これは体勢と技術が伴っていないとできない。一番難しいことを簡単にやっているのは本当にすごい」。金メダリストをうならせた一戦は、見た目以上の〝完勝劇〟だったようだ。

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