なりふり構わず

 「なり」は服装、「ふり」は態度のこと、漢字では「形振り」と書くそうだ。「なりふり構わず」といえば、見た目や体裁など二の次で、物事に熱心に取り組む様子をいう言葉▲昨日の政治面には〈延命最優先〉と身もふたもない見出しがあった。自民党総裁選での再選に執心する姿が「なりふり構わず…」と表現されているここ数日の菅義偉首相▲党役員の任期を制限する対抗馬の党改革案が好感されていると見るや、前首相時代から党運営を支えてきた大物幹事長の交代を含む人事の刷新を打ち出した。一昨日は衆院の解散と総選挙を先行させ、総裁選を先送りする政治日程案が一時、急浮上した▲どちらも話の筋は分かりにくい。今、党の役員を入れ替えても総裁選の結果次第で一切はご破算だ。総選挙を先に…ばかげている。すぐに交代するかもしれない党首を掲げて戦う選挙で有権者に何を選べというのか▲ただ、昨日朝、早期の衆院解散を改めて否定した首相の口調には、珍しく力強さを感じた。政局の主導権を握っている高揚感が気持ちを支えているのだろうか▲それにしても-。このなりふり構わぬ熱意が、例えば、国民に語り掛ける時の姿勢に発揮されていれば、今のコロナ感染状況も、もう少し違ってはいなかったか…そんなことをつい考える。(智)

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