メルセデスPUの向上に疑問を抱くレッドブルF1。FIAに合法性を問い合わせ

 メルセデスF1のパワーユニット(PU/エンジン)が第10戦イギリスGPから明らかに向上したと考えるレッドブルは、その背景に違法な行為がないかどうかを確認するため、FIAに問い合わせを行っている。

 GPSデータ分析によると、メルセデスW12はイギリスGP以降、低速コーナーからの立ち上がりが著しく向上しているという。レッドブルは、メルセデスがストレートの初めの時点で20馬力をゲインしており、インタークーラーのエアインテークにトリックがあるのではないかと考えている。なお、フェラーリもメルセデスの向上を注視し、調査を行っている。

 イギリスGPの1周目に起きたルイス・ハミルトン(メルセデス)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)のアクシデントを見ると、ハミルトンは低速コーナーからの立ち上がりで大きく稼いでいることが分かる。レース後の分析で、ハミルトン車の加速が、それまでのグランプリよりもはるかに良いことが分かったため、レッドブルはこの件について本格的に調査を開始した。

 レッドブルはこう考えている。メルセデスは、インタークーラーへと空気が送り込まれる初期段階で空気を冷やし、それによりチャンバーに入る空気の温度も下げている。冷たい空気は熱い空気よりも密度が高く、より多くの燃料を燃やし、より大きなパワーをもたらすことになる。

 温度は規則で制限されており、FIAのセンサーにより測定されている。メルセデスがセンサーが設置された場所で規則に従っていることは間違いない。だがレッドブルとフェラーリは、それ以降のセンサーが測定していない場所では温度が低くなっているのではないかという疑いを持っている。

メルセデスF1 W12とレッドブルRB16B

 メルセデスは、パワーユニットには変更を加えておらず、直線スピードの向上はウイングの設定とエンジンのデプロイメント戦略の変更によるものだと主張している。ハミルトンもバルテリ・ボッタスも、ストレート終わりではさほどスピード上の向上を示していない。W12が大きなアドバンテージを見せるのは加速段階なのだ。レッドブルの推測では、温度の低い空気によってパワーの向上を得た後、コンプレッサーから温かい空気が押し出されてアドバンテージが消えるのだという。

 インタークーラーのエアインテークの内部設計を知ることはできないため、レッドブルは、FIAに対していくつかの設計図を提出し、それらを使用することが許されるかどうかを問い合わせている。これは、ライバルが使っているシステムの合法性を疑い、それを禁止する技術指令を出してもらうための常套手段だ。FIAの返答は遅くともイタリアGPまでにはなされるものと考えられている。

© 株式会社三栄