元阪神・林威助監督、就任1年目で台湾リーグ前期制覇「プレッシャーは大きかった」

胴上げされる中信兄弟・林威助監督【写真提供:CPBL】

中断を挟んだ前期、中信兄弟は統一とのデッドヒートを制した

前後期60試合制で行われる台湾プロ野球、前期シーズンは元阪神の林威助監督が率いる中信兄弟が優勝を飾った。台湾では、新型コロナウイルスの市中感染が急拡大したため、5月18日から1軍公式戦が、5月19日からは2軍公式戦が一時中断となった。2か月近い休止期間を経て、7月13日に1軍公式戦が再開された。

中信は、再開時点で1位の統一セブンイレブン・ライオンズとのゲーム差はなし。7月下旬から8月上旬にかけて6連勝するなど、公式戦再開後、7割近い勝率を残して8月4日に前期優勝マジック「7」を点灯させた。消化試合数が多かった統一も、プレッシャーをかけるべく粘りをみせた。しかし、マジック3で迎えた15日、中信は味全ドラゴンズ戦で8回に4点奪って逆転勝ち。一方、前期最終戦の統一は、富邦ガーディアンズ戦で2点リードの8回に3点を奪われて逆転負け。中信のマジックは「1」となった。

そして迎えた17日の楽天モンキース戦、中信は3回までに7点を奪い主導権を握る。一時、4点差まで詰め寄られたものの、6回からはハーラーダービートップのホセ・デポーラ投手が今季初めて救援登板。デポーラは4回をパーフェクトに抑え、9-4で逃げ切り前期シーズンを制した。前身の兄弟エレファンツ時代を含め、通算17度目の半期優勝となった。

休止期間には、主砲の張志豪が肘の手術で離脱。戦力への影響が懸念されたが、抜擢された23歳の陳文杰が14試合連続安打、5本塁打とその穴を十分に埋める活躍をみせた。さらに、主将でリードオフマンの王威晨がリーグ再開後、チーム1位の打率.415、出塁率.456をマークし、チームを牽引した。

投手陣は頼みの外国人先発陣がぴりっとせず、先発投手の防御率4.90はリーグ最下位だった。しかし、デポーラが11勝(うち先発で10勝)と奮闘。特に再開後、統一戦4試合に先発、いずれも好投して3勝(1引き分け)をもぎ取ったのは大きかった。一方、救援投手の防御率は2.39でリーグ2位。3.73の楽天に大差をつける抜群の安定感をみせた。本塁打数はリーグ最多で、失策数がリーグ最少、優勝までの57試合でバント数45回はこの9年間におけるリーグ最多と、公式球の反発係数が昨年に比べて抑えられた中、「着実に点を取り、無駄な失点を防ぐ」戦略、意識づけもみられた。

林威助氏は3年間の2軍監督を経て今季から1軍の指揮を執る

一方、昨季の台湾王者である統一は休止期間中に、チーム勝ち頭のテディ・スタンキウィッツ投手が東京五輪メキシコ代表入りを理由に退団したほか、7月下旬には主力先発投手の古林睿煬が指先の皮が剥けた影響で離脱するなど投手力がダウン。勝負どころで攻守に脆さも見せ、昨年後期に続く半期優勝はならなかった。

3年間の2軍監督を経て、昨年12月に中信の1軍監督に就任した林監督は、就任最初の半期シーズンでチームを優勝に導くこととなった。最も苦労した点を問われた指揮官は、投手起用だったと説明。「先発が安定せず、中継ぎに負担をかけたが、彼らが安定した投球をしてくれたことで何試合も逆転勝利を収めることができた。これこそチームプレーの精神だ」と救援投手の奮闘に感謝した。

さらに「プレッシャーは本当に大きかったが、我々はチーム一丸となって乗り越えた。選手たちをねぎらってほしい。とにかく今はぐっすり眠りたい」と笑った。

台湾プロ野球は、前期と後期の優勝チームが台湾シリーズを戦う。ただ、前後期ともに同じチームが優勝した場合、前後期の優勝チーム以外が年間勝率1位となった場合にはプレーオフが行われる。前期優勝を遂げた中信は少なくともプレーオフ進出の権利を手にした。直近7年で台湾シリーズに6度進出しながらいずれも優勝を逃している。林監督には、兄弟エレファンツ時代の2010年以来、11年ぶりとなる“台湾一”の期待が寄せられている。

なお、注目のドラフト1位、元阪神の呂彦青(ル・イェンチン)投手は後期の5試合目、8月29日の統一戦で初登板。1点ビハインドの8回2死1塁でマウンドに上がり、ショートライナーに打ち取った。林監督は、台中インターコンチネンタル球場で行われる主催試合で先発起用する可能性も示唆した。また、2軍にはロッテと阪神でプレーした高野圭佑投手が在籍している。デポーラ以外の1軍外国人投手に今ひとつ信頼感がない中、しっかりアピールして1軍昇格の機会をつかみたい。後期シーズンの戦いぶりにも注目だ。(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

© 株式会社Creative2