菅首相が退陣へ 同情、不満、あきらめなど… 長崎県民の反応

菅首相の退陣表明を伝えるニュースに対し、県民はさまざまな反応を見せた=長崎市内

 新型コロナウイルスが猛威を振るう中で突然、退陣を表明した菅義偉首相。感染を防ぐため事業や行動の制限を強いられている長崎県民は、わずか1年で退く国のトップに対し、同情や不満、あきらめなど、さまざまな反応を見せた。
 国のまん延防止等重点措置に指定された長崎、佐世保両市の飲食店は、午後8時までの営業時間短縮に加え、酒類の終日提供自粛も要請されている。「会食は感染リスクが高い。それを控えるよう首相がメッセージを出すのは仕方ない」。佐世保市内で飲食店を経営する西頭翔太郎さん(39)はこう理解を示す。ただ「どんな条件をクリアすればお客さんが安心して店に行けるようになるのか、指針を示してほしかった」と語った。
 国の観光支援事業「Go To トラベル」は菅首相の肝いり政策だったが、感染拡大で停止されたまま。県旅館ホテル生活衛生同業組合の村木營介理事長(76)は「タイミングが悪かったという意見もあるが、(観光客増の)効果もあった。よくやってもらった」と評価した。8月の大雨災害の影響で休館している雲仙いわき旅館の石動義高専務(64)は「復旧支援の動きが鈍らないようスムーズなバトンタッチをお願いしたい」と注文する。
 「えー、びっくり」。長崎市の中学校教諭、御所美穂さん(56)はニュースに驚き、「一番大変なときに総理になり、一生懸命頑張っていた」と労をねぎらった。だが職場では、リモート授業の準備などコロナ対応に追われる毎日。「周囲が支えながらコロナ対策を続けてほしかった。首相が変わって極端に(政策などの)方針が変わるのは困る」と語った。
 新型コロナに感染し、中等症で入院経験のある県内の30代男性会社員は、「コロナ対応は誰にとっても初めてのこと。十分ではなかったが、不満を言ってもしょうがない」と冷めた様子で話した。
 長崎市医師会感染症担当理事で「まさき内科呼吸器クリニック」の真崎宏則院長(58)は「首相が代わっても、県内のコロナ対策や医療体制ががらりと変わるものではない。厚生労働省が動き、自治体もしっかり機能している。私たちも今やっていることを継続することになるだろう」と冷静に受け止める。今後もワクチンを安定供給するよう求めた。
 五島市大荒町の無職、岩崎孝明さん(77)は「昨日まで総裁選に出馬すると言いながら裏腹だ。会見をテレビで見ていても、記者の質問に正面から答えず、発信力は最低だった」と批判。次のトップに対しては「離島や山間部など過疎化している地方の現状を直接見て、対策を取ってくれる人がいい」と切望した。

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