阪神“新打線”で逆転勝ちも「3番・近本」の是非は? OBは危惧「リズム崩す恐れ」

阪神・近本光司【写真:荒川祐史】

“新1番”中野が殊勲の勝ち越し三塁打

■阪神 7-3 巨人(3日・甲子園)

阪神は3日、本拠地・甲子園球場で行われた巨人戦に“新打線”で臨み、7-3で鮮やかな逆転勝ちを収めた。それまで今季全試合で「1番・中堅」としてスタメン出場してきた近本光司外野手の打順を、102試合目にして3番に変更。8月下旬から2番に定着していたドラフト6位ルーキー・中野拓夢内野手は、1番へ昇格した。「2番・右翼」に抜擢された島田海吏外野手は、今季初スタメンだった。この打順が16年ぶりの優勝の鍵になるのだろうか。

首位・巨人との直接対決3連戦の初戦。矢野燿大監督がオーダーに手を加えた。2点ビハインドで迎えた7回には、7番・大山悠輔内野手の起死回生の2点適時二塁打で追いつき、なおも2死満塁として、1番・中野が巨人4番手・大江から走者一掃の3点三塁打を放って勝ち越した。

中野を1番に上げたことが的中した格好だが、この打順は今後の阪神の基本形になっていくのだろうか。「そうではないと思いますよ」と懐疑的な見方を示すのは、ヤクルト、阪神など4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏だ。「せっかく1番で結果を出していた近本を3番に替えたことには、疑問が残ります」と言う。

阪神・中野拓夢【写真:荒川祐史】

「プレイボールと同時に打席に入る1番には独特のリズムがある」

最近の阪神は、好調の1番・近本、2番・中野が塁に出ても、主軸が返せないパターンが目立っていた。チーム唯一の3割打者(.308=3日現在)の近本に「返す役割」の3番を任せたことが、新打線の肝と言える。野口氏は「プレーボールと同時に打席に入る1番打者には、独特のリズムがある。好調だからと言ってクリーンアップを任せた途端、リズムが崩れて打てなくなるケースは結構あります。クリーンアップ内で順番を変えるのとは全く違うのです」と指摘する。実際、この日3番の近本は4打数ノーヒットに終わった。

幸い、ペナントレース前半終了後に一時帰国し再来日後の調整がやや遅れていたジェフリー・マルテ内野手が、ここにきて調子を上げてきた。7番に下がった大山も、この日は4打数3安打3打点。1、2番コンビは近本、中野とし、3、4番は前半の基本形だった「マルテ、大山」に戻す可能性も十分ある。いずれにしても、激烈な優勝争いを勝ち抜くために、オーダーはなるべく早く固定されることが望ましい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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