阪神・糸井「宇宙人」超える存在に! 代打での勝負強さに加え…驚異の “発信力”

勝負のかかる場面で、矢野監督(左)の信頼も厚い阪神・糸井

阪神は前週末の対巨人3連戦を2勝1分けで勝ち越し、首位の座を死守。3位ヤクルトも含め3チームがゲーム差3・5内でひしめく〝混セ〟の戦いはここからますます激しさを増していく。16年ぶりとなる悲願のリーグ制覇へ向け、これまで以上にチーム一丸での戦いが求められるが、そんな阪神の中で改めて存在感を増しつつあるのが糸井嘉男外野手(40)だ。ムキムキの肉体から発せられる覇気と言葉で、チームを鼓舞する姿勢が目立つようになってきた背番号7。〝超神〟へと進化した虎の超人が猛虎を頂点へと導く――。

3日の対巨人3連戦初戦(甲子園)では、3点を追う6回無死一塁から代打で出場。追撃のノロシとなる右中間への適時二塁打を放ち、7―3の逆転勝利を演出した。5日の第3戦でも5―6の7回二死一塁から、代打で左中間を真っ二つに割る適時二塁打。最大6点のビハインドを追いつくドラマチックなベテランの同点打に、ナインも虎党も熱狂。逆境を「何とかしてくれる」糸井の存在感は、苦しいチーム状況の今、ひと際輝いている。

「勝ちたい。ただその思いだけでした。調子のいい悪い関係なしに気持ちでやるしかない。チーム全員ですごく気持ちのこもった3連戦だった」。試合後のコメントからも覇気がにじみ出る。不惑をすぎてなお、ムキムキな肉体はストイックな鍛錬のたまもの。早出特打練習にも連日参加し〝代打屋〟としての準備を欠かさない。

「マイペースな宇宙人タイプ」と、これまで表現されることの多かった糸井だが、藤川球児氏、福留孝介(現中日)、能見篤史(現オリックス)らがチームを去った今、唯一の40代選手としてプレーと言葉でチームを直接的に鼓舞する姿勢がより目立つようになった。

今夏に新設したツイッターアカウントでも積極的に自身の思いを発信。敵地で広島に3タテを食らい首位から陥落した直後の8月30日には短文ながら「まさか…ひよってるやついる?」とのメッセージを投稿。漂い始めたV逸の気配に沈む虎党たちに活を入れる〝檄文〟は多くの反響を呼んだ。

球団OBも、18年ぶりのリーグ制覇を果たした2003年当時を振り返り「あのころの阪神も夏場以降一時的に勢いが落ちた時があったんだけど、そんな時にチームを支えてくれたのは(00年にヤクルトから移籍した)広沢(克実)さんだった。同様に今だからこそ糸井の力が阪神には必要。当時をよく知る矢野監督も十分にベテランの大切さを理解しているだろうし、今後も出番は増えるだろうね」と話す。

若返りに成功し20代の選手が主力の大半を占めるようになった阪神だが、その一方で「チーム全体としての経験不足」を指摘されることも多かった。だからこそ日本ハム時代に何度となく優勝争いを制してきた経験のある糸井の存在感は大きい。シーズンは残り39試合。本当にシビアな戦いはまだまだこれからだ。でも、阪神には糸井がいる。

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