東京パラリンピック 長崎県勢総評 躍動した若い力 共生社会実現の一歩に

車いすバスケットボール男子で銀メダルを手にした鳥海(右)と川原=有明アリーナ

 東京パラリンピックが5日、13日間の熱戦に幕を下ろした。日本選手団は金メダルなしに終わった2016年リオデジャネイロ大会から、金13、銀15、銅23の計51個のメダルを獲得するなど自国の大舞台で躍進。長崎県勢も車いすバスケットボール男子の鳥海連志(パラ神奈川SC)と川原凜(千葉ホークス)が過去最高の銀メダル、卓球男子シングルス(知的)の浅野俊(PIA)も8強と健闘した。

□ホープ3人

 目覚ましい活躍を見せたのは車いすバスケットの2人。22歳にして2度目のパラに臨んだ鳥海は、既にチームのエースと言える存在だった。大会を通じた個人成績は、リバウンドで1試合平均10.8本を記録して3位に入ったのをはじめ、スチール、アシストなどでトップ10入り。世界に鮮烈な印象を残した。
 川原は持ち点が1.5点で、障害が重いクラスの「ローポインター」。ディフェンスや味方を生かして得点機をつくり出すなど、献身的に自らの役割を果たした。初出場ながらチームの信頼も厚く、スタメンや勝負どころで起用される場面が多かった。
 浅野も初の大舞台で堂々とした戦いぶりを見せた。1次リーグ初戦で世界ランキング3位のフォンアイネム(豪州)から金星を獲得。準々決勝は同1位のパーロシュ(ハンガリー)に敗れたものの、2-3の大接戦だった。そのパーロシュは決勝でフォンアイネムに3-2で競り勝ち優勝。浅野も十分に頂点が狙える位置にいることが確認できた。
 3人とも20代前半で、それぞれ各競技の将来を担うホープ。世界最高峰の決勝を経験した車いすバスケット勢はもちろん、浅野も「パリで金メダル」と3年後を見据えており、さらなる飛躍が期待される。

卓球男子シングルス(知的障害)で8強入りした浅野=東京体育館

□社会へ希望

 コロナ禍で原則無観客となったが、開閉会式を含めたテレビ放送などで、パラアスリートの格好良さや競技の魅力を伝える見せ方の工夫が随所に見られた。パラスポーツに挑戦を迷っている障害のある子どもたちにとっても、一歩を踏み出すきっかけになったかもしれない。県勢3選手には、愛情を持ってその一歩目を応援してくれた周りの大人たちがいた。障害の有無にかかわらず、誰もがその応援者にはなれるはずだろう。
 パラスポーツの魅力に触れた後は、選手たちが日ごろ、どんな社会生活を送っているかにも目を向けてほしい。県車いすバスケット協会の山田健一前会長は「長崎は地形の問題もあるかもしれないけれど、バリアフリーに関してはまだまだ」と口にする。
 車いすバスケット女子でパラ5大会に出場した南川佐千子さん(佐世保市在住)が言うように「パラ後の日本がどのように取り組んでいくのかが大事」。大会の成功は、これからの日本や長崎の姿によって証明されると思っている。


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