川崎・多摩川スピードウェイ遺構 保全求め国に要望書

多摩川スピードウェイの名残として、階段状の観客席跡が残る多摩川河川敷=川崎市中原区

 川崎市中原区の多摩川河川敷に開設された日本初の常設サーキット「多摩川スピードウェイ」の遺構を壊す堤防強化工事計画が浮上している問題で、産業遺産学会(横山悦生会長)は6日までに、遺構の全面保存と治水対策を両立する工法への見直しを求める要望書を国土交通相と京浜河川事務所に送付した。今後、学会は同遺構を推薦産業遺産に認定する考えだという。

 要望書では、取り壊しが計画されているサーキットの観客席の遺構について、「他に類例がない世界的にも重要な歴史的建造物と認識している」とし、携わった企業や人材が戦後の自動車産業の発展に主導的役割を担った意味でも「産業文化史の観点でも重要な産業遺産」と強調した。

 その上で、堤防強化工事について「既存築堤や観客席に対する適切な補修・強化工事で現代の性能水準に引き上げる」ことで、治水と保全は両立可能と説明。歴史的構造物保全技術の専門家を加えて、工法や工事計画を再検討するよう求めた。

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