左対左でも打者は不利じゃない? DeNA三浦監督の光った采配と伏線

DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】

楠本は左の大江からダメ押しの2号3ラン

■DeNA 8―2 巨人(7日・横浜)

DeNAは7日、本拠地・横浜スタジアムで行われた巨人戦に8-2で快勝した。昨季限りで巨人を自由契約となり、育成契約を経て8月30日に支配下登録された宮國が移籍後初勝利。一挙7得点で宮國を援護した5回の攻撃では、就任1年目の三浦大輔監督の采配が光った。

1-2の1点ビハインドで迎えた5回だった。DeNAは巨人のエース菅野を一気に攻略した。1死から佐野の中前打、オースティンの四球でチャンスメークすると、宮崎が左翼線へ適時二塁打を放ち同点。さらに牧の死球を挟み、ソト内野手が左翼線へ2点適時二塁打で勝ち越した。

なおも1死二、三塁の好機に、打席に入った山本祐大捕手は初球をスイング。内角高めのシュートにバットを根元から折られファウルとなった。球場がどよめく中で、2球目にはスクイズを敢行。菅野が本塁へグラブトスするも、頭から滑り込んだ牧の手が捕手・小林のタッチを掻い潜りホームベースをなでた。相手の虚を突く好采配だった。

三浦監督はさらに続くチャンスで、勝利投手の権利が生まれた宮國の代打として、左打者の楠本を起用。巨人はすかさず、変則左腕の大江にスイッチしたが、これも想定内だった。指揮官は「(左投手が来ても)そのまま打たせるつもりだった」。楠本は期待に応えて初球のスライダーを一振りで仕留め、右翼席中段へダメ押しの2号3ランを放ったのだった。

「クス(楠本)は、自分に対して相手が投手を左に代えてきたことをポジティブにとらえていた」

この起用には伏線がある。8月31日の広島戦、7回に三浦監督は「代打・楠本」を送ったが、ここで相手投手が右腕の島内から左腕の塹江にスイッチされると「代打の代打」で蝦名を送った。楠本は打席に立てずじまいだったが、三浦監督によると「クス(楠本)は、自分に対して相手が投手を左に代えてきたことをポジティブにとらえていた」。自分への警戒感が伝わり、気分は悪くなかったというわけだ。

これでひらめいた三浦監督は、翌9月1日の同カードで、相手の先発左腕・玉村に対しあえて代打・楠本をぶつけて、左前適時打を引き出した。指揮官と選手のコミュニケーションが生んだ一打と言えるだろう。楠本の対左投手の成績は、今季6打数4安打(打率.667)となり、当面「左対左」を不利ととらえる必要はなさそうだ。

7日現在リーグ最下位のDeNAだが、4位・広島、5位・中日を含め1ゲーム差内にひしめいている。ここにきて“ハマの番長”の采配に特徴が見えてきた。まずはBクラス内の争いから抜け出し、さらに上を目指す。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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