左投手に左の代打を送った意図とは? “コミュ力”光るDeNA三浦監督の絶妙采配

DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】

左打者の楠本と試合前に対話「本人は左対左をポジティブにとらえていた」

■DeNA 7ー2 広島(1日・横浜)

DeNAは1日に本拠地・横浜スタジアムで行われた広島戦に7-2で勝ち、中日と並んで4位タイに浮上した。DeNAにとって4位タイは、3月26日の開幕日以来で今季最高位。就任1年目の三浦大輔監督は開幕からいきなり6連敗、4月9日から10連敗とどん底を味わってきたが、俄然光明が差してきた。ここにきて指揮官のコミュニケーション能力が光っている。

3-1と2点リードして迎えた6回だ。大和の左前適時打で1点を追加し、なおも1死一、二塁。打順は先発の大貫晋一投手に回り、三浦監督は代打を送る決断をした。相手投手は左腕の玉村だったが、あえて左打ちの楠本泰史外野手を指名。これが的中し、楠本はカウント1-1から内角低めのストレートを左前へ運び、4点差に広げて試合の流れを決定づけた。

この起用には裏付けがあった。前日8月31日の同カードでのこと。DeNAは2点ビハインドで迎えた7回、宮崎の左前適時打とソトの19号2ランで逆転し、さらに2死一塁とチャンスが続いていた。三浦監督は「代打・楠本」をコールするも、相手投手が右腕の島内から左の塹江にスイッチされると、「代打の代打」で右の蝦名達夫外野手に代えた。楠本は打席に立てずじまいで、蝦名も空振り三振に倒れた。

一夜明け、この日の試合前に、三浦監督は楠本と会話を交わしたという。「クス(楠本)とは話をしました。前日は左投手が来たので“代打の代打”を送りましたが、本人は左対左をポジティブにとらえていた。試合前の練習にも前向きに臨んでくれていたのでね」と明かした。

実際のところ、楠本は左投手の時に打席に立たせてもらえる機会自体が少ないが、試合前の時点で、今季右投手に対して打率.244(41打数10安打)、左投手に対しては.333(3打数1安打)。昨季も右投手に.136(22打数3安打)、左投手には.250(4打数1安打)だった。本人に左投手に対する苦手意識はないようだ。

コミュニケーションを重視する三浦監督、3&4番の入れ替え時もじっくり説明

三浦監督は就任当初から「コーチとも選手とも球団スタッフとも、とにかくコミュニケーションを取っていきたい」と掲げている。この日も試合前の会話が、左投手に対して左打者を代打に送るという、セオリーとは逆の采配につながり、実を結んだ。

一方、先制二塁打を含む4打数3安打1打点と活躍した主将の佐野恵太外野手を「ベンチでもチームを鼓舞し、キャプテンとしてチームを引っ張ってくれている」と称え、佐野とも「もちろん常に話をしている」と言う。

佐野は昨季、アレックス・ラミレス前監督から4番と主将に抜擢され開花した選手だが、2軍監督から昇格した三浦監督も今季、キャプテンを任せている。今年5月、4番の佐野と3番のタイラー・オースティン外野手の打順を入れ替える際にも、じっくり説明と話し合いの場を持った。

三浦監督には現役選手として25年、指導者として足掛け3年、このチーム一筋で過ごし、あらゆる経緯を熟知している強みもある。選手1人1人と向き合い、“ハマの番長イズム”がじわじわと浸透。3位ヤクルトには11ゲームの大差をつけられているが、DeNAにはさらに上を目指すムードが醸成されている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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