廃棄予定の公文書リスト初公表 長崎県 市民団体、慎重対処求める

県が公開した廃棄予定簿冊リストの一部

 長崎県は7月、本年度廃棄予定の公文書(廃棄予定簿冊)計約2万8900冊の件名リストを初めて公開し、廃棄に関する意見を1カ月間募集した。これに対し、公文書保存・活用の強化を求めている市民団体「長崎の近現代資料の保存・公開をもとめる会」(呼び掛け人・山口響氏ら7人)は公開を評価する一方で、さらに慎重な廃棄手続きを求めた「緊急アピール」を8月に公表した。
 県は文書取扱規程に基づき、保存を終えた公文書を毎年度廃棄している。長崎市に来年3月開館予定の県立長崎図書館郷土資料センターに「公文書コーナー」を設けるのに合わせ、規程の一部を改めて手続きの透明性を高めた。
 公文書は後世、歴史的な出来事に対する行政判断・措置の検証などに有用。同コーナーの開設を約半年後に控え、廃棄手続きの在り方や保存に対する県の姿勢が改めて注目される。
 県総務文書課によると、使わなくなった公文書は規程に基づく所定の期間(最長30年)保存した後、歴史的、文化的価値がある文書(歴史的文書)を除いて廃棄。歴史的文書は2000年に定めた基準に沿って毎年度選別しているが、選別作業はこれまで県内部だけで行っていた。
 本年度選別した歴史的文書は約180冊。リストはこれを除いた廃棄予定簿冊について、作成年度、名称などだけが分かる内容。13部局別で計約1150枚に及ぶ。7月26日~8月25日の1カ月間、県庁やウェブ上で公開。郵便、電子メールなどで意見を募集した。今後、意見を踏まえた上でリストの文書の廃棄を決定する。
 県の公文書保存を巡っては、旧県立長崎図書館跡地に整備中の郷土資料センターに、歴史的文書を保存・公開する公文書コーナーが開設される計画。これに県内外の研究者でつくる「-もとめる会」が19年末「公文書管理の専門職が置かれず、収集・保存の姿勢も不十分」などと指摘。県は20年2月定例県議会で、廃棄予定リスト公開などの検討を表明した経緯がある。
 緊急アピールで同会は、リスト公開自体を「高く評価したい」としつつも「保存文書の選別には時間もかかり、専門的見識も必要」と指摘。全文書の廃棄を差し止め、試験的に県関係者と住民、学識者らで廃棄文書を選別するチームをつくるよう提案し、県の見解を求めている。
 山口氏は「意見を募るだけでなく、第三者が選別に加わるプロセスを立ち上げるべきだ」と話す。8月までの意見募集にも十数件が寄せられている。いずれも同課は「精査した上で県として(どう対応するかを)回答したい」としている。
 件名リストは「-もとめる会」ホームページで公開している。

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